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2008/07/12(土) 23:23:50
咲嘉
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確かにね、と思わず苦笑を零す。
岩長姫はここを纏めている人だと言っていたし、私と唯花が明確な返事をまだしてないから、それは変わらない筈。
なら、帰ってくるのは間違いない。
それが遅いか早いかは別にしても。
でも、やっぱり気になる。
「場所は解るの?」
「それなら心配ないぞ、おいらが案内する!」
元気よく告げた子を改めて見ると、思わず言葉を失った。
気付いた那岐が、狗奴の一族だよ、と耳打ちしてくれた。
つまりそういう種族?中つ国って、色んな種族がいるってこと?
ゲームや漫画でしか見ないような姿の少年を見下ろしていると、那岐が隣で呟いた。
「案内ってお前が?」
「ああ、おいら姫さま達をお守りするように言われてるからな。」
足往だよ、と唯花が紹介してくれる。
足往はどこか誇らしげで、見ているだけで微笑ましい。
「外出るなら逃げ出すくらい言うかと思った。」
「何言ってるの、お世話になったのに逃げるなんて。」
逃げるっていうのは後ろめたいことがある時に使う言葉だ。
那岐は溜息を吐いて呆れ果てている。
それに些かムッとして、腰に手を当てる。
「いいよ、行きたくないなら那岐は来なくても。」
「……そんなこと言ってないだろ。」
那岐も少しかちんときたらしくて、臨戦態勢に入る。
大体那岐は、と私が言いかけたところで、間に風早の手が入った。
穏やかに仲裁されては言うこともない。
大人しく引き下がった私を唯花が心配そうに見つめるから、平気だよと頭を撫でた。
那岐にも、ごめんねと一言謝る。
訳の解らない事態になって、本当は自分で思ってるより混乱してるのかも。
だとしたら完全に八つ当たりだ。
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2008/07/12(土) 23:23:37
風早
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唯花を送り届けた後、砦の門に行って、守衛に話を聞いた。
しかし先生はまだ戻っていないらしい。
同時に、これが珍しいことではなく、大抵はもう少し時間がかかると聞けた。
咲嘉と唯花が軍を率いるにしろそうならないにしろ、先生と話す機会は必要だ。
二人とも気を揉んでいるだろうから、まだ少し時間がかかりそうだと知らせに行こう。
そう考えてまず唯花のいる部屋に向かうと、その入り口には既に那岐と咲嘉がいる。
「風早。」
「二人とも、どうかしましたか?」
「特には。唯花の様子を見に…」
その言葉に笑って、じゃあ皆で顔を出しましょうか、と提案した時。
部屋からぱたぱたと、唯花が出てくる。
その手は一人の狗奴の少年に握られている。…足往と言ったか。
「あっ、風早、咲嘉ちゃん、那岐君。丁度良かった。」
「唯花、どうかしたんですか?」
唯花は笑って、足往にありがとうと告げて手を離す。
「あのね、ちょっと出かけようと思って。岩長姫はまだ戻ってない?」
「ええ、まだ少しかかるようですよ。」
俺が告げると、やっぱり、と唯花は考え込む。
その様子に咲嘉が、気遣わしげに視線を合わせた。
唯花はきょとんと首を傾げたものの、すぐにまた笑う。
「ね、私達も御木邑に行ってみようよ。」
「岩長姫が行ってるかもしれないから?」
咲嘉が問うと、唯花はこくりと頷いた。
なんとも行動的だと俺が感心していると、那岐が溜息を吐いた。
待ってりゃそのうち帰ってくるんじゃないの、と呆れている。
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2008/07/12(土) 08:41:20
唯花
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風早が淹れてくれたお茶を飲んで、それから少しゆっくりすると良いと言って
風早は私を部屋に送り届けてから何処かに行ってしまった。
どうしたものかと考えながら、ずっと寝ていた部屋で一人膝を抱える。
咲嘉ちゃんがいれば、咲嘉ちゃんと色々相談したんだけど。
「…私が、お姫様かぁ…」
咲嘉ちゃんなら凄く納得するんだけどな。
咲嘉ちゃんは私と違って頭も良いし、綺麗だし。
でも私は頭も悪いし取り柄といえばちょっと運動神経が良いぐらい。
お姫様なんて柄じゃないって自分が一番知ってる。
けど、皆はお姫様だと私を言う。
ううん、疑ってる人だっているけれど、それでもお姫様になろうとしてる。
「…お姫様って何やれば良いんだろ……」
国は滅んでしまっているらしいから、国を立て直せば良いの?
でもそれって戦場に出るってことで。
私は、戦えば良いのかな。
わからないと呟いて、それから立ち上がる。
やっぱり岩長姫さんに正直に話すしかない。
何をすれば良いのかわからない私に、軍を率いるなんて無理な話で。
咲嘉ちゃんにだって無理だよ。
岩長姫の所に行こうと思って部屋を出ようとすれば、
一人の男の子が立っているのが見える。
耳と尻尾があって、わぁ、と思わず零してしまう。
「姫様、何処に行くんだ?」
「へ?……あ、私か」
姫さまって誰のことかと思っちゃった。
驚きながらもその男の子に近付いてまじまじと見つめる。
12歳ぐらい、かな。私より年下なことは確実だけど。
「あのね、岩長姫さんの所に行こうと思ってるんだ。
まずは咲嘉ちゃんと風早と那岐君と合流!」
「おいら、姫様を守るように言われてるんだ!だから、外に出ちゃ駄目だ!」
そう言い切る男の子を見て、首を傾げる。
外って、部屋の外も駄目なんだろうか?咲嘉ちゃんや風早にも会えない。
「お願い、行かなくちゃ駄目なんだ。えーっと…」
「おいらは足往だ」
「じゃあ足往」
耳と尻尾があるのは、この世界じゃ普通なのかな。
聞こうかどうか迷って、やめておいた。
何か失礼なことだったら申し訳ないし、あとで風早にでも聞けば良いよね。
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2008/07/11(金) 22:26:30
風早
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そうハッキリと言ってしまう唯花が哀しくて、手を伸ばす。
願ってもないこと。
唯花がそう言ってやる気になってくれるのは、喜ばしいことだ。
今は中つ国の再建が、一番に成すべきことだから。
けれど俺としては複雑でもある。
咲嘉や唯花にはあのまま、人並みの幸せを手にして欲しかった。
王になれば、辛いこともたくさんある。
――いや、王になるまでに、辛いことも哀しいことも、たくさんあるだろう。
「…お茶を淹れますよ。」
にこりと微笑んで、唯花の手を引く。
この場での明確な答えを出せない俺は、卑怯かもしれない。
唯花は何も言わずについてきている。
せめて咲嘉と唯花が双子で無ければもっと違っただろうか。
そんなことを考えて、首を横に振った。
どちらにしろ、どちらかが悲しい想いをするだろう。
「本当は全部説明するつもりだったんですけどね。…その前に帰る気が無かったんですが…」
けれど帰ってきてしまった。
もう戻ることも出来ない。
だから咲嘉と唯花もここで生きていくしかなく、そうなると神子としての役目は避けられない。
神子として、中つ国の二の姫として、そして次期王として。
どちらが王になるとしても、試練は多いだろう。
果たして俺が役に立てるだろうか。
二人が平和な生活を手に入れるために、俺も何か出来るのだろうか。
――いや、しなければ。
二人にとって決して優しくはないこの世界で、せめて俺だけでも。
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2008/07/10(木) 21:11:45
唯花
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風早が悪いんじゃないってことぐらいわかる。
風早は今までずっと一緒にいてくれて、育ててくれて、守ってくれて。
今だってこうして一緒にいてくれてるし、これからだって、きっと。
「…風早は、こっちの世界でも私達と一緒にいてくれてたの?」
私が、たとえば皆が言うように本当に姫だとすれば。
それなら風早はこっちの世界でも私を守ってくれてたりしたんだろうか。
…私だけじゃない、咲嘉ちゃんも。
風早は少しだけ目を伏せて、ええ、と頷いた。
それに有難うと咄嗟に告げて、それから風早をじっと見上げた。
「風早が言うことなら何でも信じるよ、風早は私達の味方だもん」
風早が私達が姫だということを否定しないから、多分、そう。
私と咲嘉ちゃんはお姫様で、それでその国は滅んじゃってて?
で、此処は生き残りの人達がいて。
私か、咲嘉ちゃんが軍の人達を率いていかなくてはいけない。
でも、ド素人の私と咲嘉ちゃんに命を握られるなんて、皆が可哀想。
それに何より無謀過ぎる。
「…風早は、私と咲嘉ちゃんに何をして欲しい?」
私達の傍にいたのが、たとえば私達がお姫様だからだとすれば。
そうしたら風早は、この日のために一緒にいてくれたのかな。
だったら、風早のためにも私は頑張らなくちゃいけない。
風早をがっかりさせないように、風早に迷惑がかからないように。
だって、風早が育ててくれたんだ。風早が守ってくれてたんだ。
従者だから、だとかそんなことじゃない。
確かに風早は私達を可愛がってくれてたんだから。
「私、頑張れるよ。今はちょっとわからないことが多いけど、大丈夫」
私が頑張れば。りっぱなお姫様になれば。そうしたら、風早は一緒にいてくれるかも。
私が、王になったら。そうしたら、たとえ咲嘉ちゃんが風早を好きでも、
風早が咲嘉ちゃんを好きでも、王になった私の傍にいてくれるかも。
そこまで考えて、そんな自分が嫌になった。
国のためだとか、自分の役目だからだとかじゃなくて、自分のために。
自分のために“お姫様”であろうとする自分が、惨めだった。
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2008/07/10(木) 21:00:21
那岐
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咲嘉は総大将をどちらがやるかということで悩んでるみたいだけど、
こんな場所からさっさと立ち去るっていう選択肢はないんだか。
いきなり総大将になれ、なんて可笑しいと思わないのか。
「…咲嘉も唯花も、今まで普通に生きてたんだ」
戦場になんて出なくても、いや、出れるはずがない。
戦場に出れば荒魂や黒麒麟みたいなものだけじゃない、人と戦わなくちゃいけない。
僕みたいに鬼道を使って、とかならまだしも、咲嘉は弓、唯花は剣。
いきなりなんて出来るはずがない。
けど、きっと逃げるなんて選択肢は最初から咲嘉の中にも唯花の中にもない。
組んだ腕を枕にして、壁に深く凭れかかる。
風早は、どうするつもりなんだろうか。
契約があるから咲嘉と唯花の傍には在り続けるだろうけど、
それでも、二人が戦場に立つことをどう思ってるんだか。
「無理しなくて良いんじゃない?無理して率いられる兵士達も迷惑だろ」
「…だよね」
けど、もし咲嘉が覚悟を決めてしまったら。
そうしたら僕も一緒か。戦うのとか、国を取り戻すのとか、正直面倒だとしか思わない。
けど、他にすることもなければ行く場所もないし、
なんだかんだいって僕も気がかりだ。
「那岐、ため息ついた」
気づかない内にため息をついていたらしい。
咲嘉にそう指摘されて、そう?としか返せない。
「ため息だって出るよ。面倒臭い」
「面倒臭い、か。そうかも」
苦笑に似た笑みを咲嘉が浮かべる。
疲れてるんだろうとはわかるけど、かける言葉も見つからなくて黙り込む。
あっちに帰れるのなら、さっさと帰りたいもんだけど、な。
言葉もなくただ隣り合ったまま、これからのことを考える。
咲嘉は生真面目だから、考えずにはいられないだろう。
「そういえば、風早と唯花は?」
「一緒にいると思う」
「ふーん、契約、ちゃんと守ってるんだ」
こっちの世界に来た時は、風早がいないから契約はどうしたんだよ、と思ったけど
ちゃんと咲嘉を守ってたみたいだし、たいしたもんだ。
「契約?」
「…そう、咲嘉と唯花を守る契約らしいよ」
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2008/07/10(木) 20:35:40
咲嘉
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適当に歩いてるけど、人に全く会わない。
避けられでもしてるのかと思うくらいに。
構わずに色々歩いていると、那岐の姿を見つけた。
私達が寝ていたのと同じような部屋で身支度を調えているのが見える。
ノックをしようか迷ったけど、ドアらしきものが見当たらないから、そのまま中に入った。
「おはよう那岐。」
「…おはよう。」
まだどこか眠そうに見えるけど、那岐は私を見て、眠れたかと聞いてくる。
頷いた。
寝たりないくらいだけど、のんびり寝ていたらとんでもないことさせられそうだ。
「ここを纏めてる?風早の先生?に会ったよ?」
「…疑問系多すぎ。岩長姫だろ?」
頷くと、那岐は僕も昨日会った、と伸びをした。
そう言えば確かに、唯花と那岐と一緒にいるのを見た。
必至だったからあんまり覚えてないけど。
那岐は準備体操でもするように肩をぐるりと回す。
それから昨日戦う時に持っていた勾玉を手首に通して、腰に手を当てる。
で?と聞かれた。
「…那岐はさ、覚えてるの?」
「……粗方はね。少なくとも咲嘉や唯花よりは覚えてるよ。」
そっか、と呟く。
総大将ってことは、岩長姫の言う百人を纏める、ってことな筈で。
でもつい昨日まで女子高生してた私や唯花に、出来る訳が無くて。
でも、二ノ咲姫と二ノ花姫だから、やらなきゃいけない?
圧倒的に情報が少なすぎる。
座り込んだ私の隣に、那岐も座った。
「あんまり深く考えない方がいいんじゃない?」
「軽い考えで答えられる訳ないでしょ、総大将になるかなんて。」
しかも私と唯花のどっちかが、絶対に。
そう告げると、那岐は眉を顰めた。
でも本当にどちらかがやらなきゃいけないのなら。
私だ。
唯花にこんなこと、させたくない。
混乱してるのは私だって唯花だって一緒だけど、でも。
はぁ、と溜息を零した。
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2008/07/10(木) 20:35:26
風早
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「じゃあ、早速総大将を決めるんだね。あたしは二人でも構わないんだが。」
「待ってください、先生…」
「なんか問題でもあるのかい?二ノ咲姫と二ノ花姫なんだろ?」
先生はあっけらかんと告げる。
証拠に咲嘉と唯花の髪の色を指し、それから天鹿児弓のことも挙げ。
極め付けは俺がついてることだと、笑う。
疑われるよりはよっぽどいいけれど、そんなに簡単に言われても。
咲嘉と唯花も目を丸くしている。
「百人足らずの生き残りの寄せ集めでも一応、中つ国の本物の軍だ。せっかく帰ってきたならぐだぐだ言わずにあんた達が頑張りな。」
「ちょっ、岩長姫?」
咲嘉が抗議しようとしたところ、兵が先生を呼んだ。
御木邑の者が、と言ったところで先生には解ったらしく、ここにいるよう俺たちに釘を刺すと、兵と共に走り去ってしまう。
唯花が呼び止めるが、先生は構わなかった。
聞こえていないのかも。
「う〜ん…ちょっと困ったことになりましたね。」
「ちょっとどころじゃないし…」
咲嘉は呆れたように告げてから、ふと歩き出す。
どこに行くのか問うてみると、那岐を起こしてくると返事。
子どもではないし、道なら近くにいる人に聞くだろう。
さて、と残っている唯花を見遣る。
混乱するのも仕方がないし、酷なことだと解っている。
中つ国を取り戻すのが大事なことだとは解っているが、もし剣を取るのだとしても、それは咲嘉と唯花、本人の意思であって欲しいから。
「先生が戻るまで待ちましょうか。お茶でも飲みますか?」
「風早…」
「――すみません、唯花。」
突然こんなところに来て、訳も解らないのに軍を率いろだなんて言われて。
俺が至らぬせいだと思うと申し訳なくて。
そっと、唯花の髪を撫でた。
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2008/07/09(水) 19:58:31
唯花
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このおばあさん、ううん、岩長姫は私達のことを知ってるらしいけれど。
私はサッパリ思い当たらない。全然知らない。
そもそも、私はこの人に会ったことがあるの?
此処は異世界っぽい場所で、私達が住んでいた場所とは全然違うのに。
「咲嘉ちゃん……」
「唯花、大丈夫」
大丈夫だと咲嘉ちゃんは言うけれど、何が大丈夫かもわからない。
本当に、私は何も理解出来ていないんだな。
自分の服をもう一度見直して、それから岩長姫をじっと見る。
…姫、なのかな。姫は名前なのか敬称なのかどっちなんだろう。
「なんだい、言いたいことがあるんならはっきり言いな」
「えーっと……、姫とかって…」
それに、気になってたこともある。
二ノ花姫とか、二ノ咲姫とかのことも、あるし。
岩長姫は驚いた顔をして私を見て、それから風早を咎めるような目で見た。
「唯花…、まだあまり思い出してないんですね」
「えっ、と……。咲嘉ちゃんは?」
咲嘉ちゃんはただ肩を竦めてみせる。
大体、説明が凄く足りてないと思うんだ。
目が覚めたら知らない世界で、知らない格好で、いきなり荒魂と戦って、
伝説のイキモノと戦って、それで。
馬鹿だからなぁ、と呟きながら岩長姫にごめんなさい、と謝る。
「でも、その、お邪魔してます」
岩長姫が驚いたように目を見開いて。
「風早の怪我の手当て、有難うございます。それから、私達を助けてくれて!」
私の言葉に頷いて、咲嘉ちゃんも続ける。
「私からも、有難う御座いました。お蔭で助かりました」
「風早先生の先生だもん!やっぱり似るのかな?優しいところとか」
咲嘉ちゃんとけらけら笑いながらそんなことを話していれば、
岩長姫が仕方がないねって感じのため息をついた。
風早はただ笑って、岩長姫に目配せのようなものをして。
「あんたが育てたんだったね。…中々悪くない育てた方だ」
「はは、有難うございます」
風早が褒められたから、私も自然と嬉しくなる。
だから自然と笑っていれば、咲嘉ちゃんが良かった、と呟いた。
何がだろうと思って咲嘉ちゃんを見れば、咲嘉ちゃんは私を見て笑っていた。
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2008/07/09(水) 18:19:11
咲嘉
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「那岐は?」
「まだ起きていないみたいですね。起こすと不機嫌になりますし、放っているんですが。」
放って、って…
呆れながら、髪を掻き上げる。
別にいいんだけど。確かに那岐は無理に起こすと後で煩いし。
休みの日の醍醐味とかなんとか言って昼寝を楽しんでることもあるし。
ふと顔を上げると、唯花の表情が暗い。
デリケートだからな、と思いながら手を伸ばして、唯花の頭を撫でた。
「風早、ここを纏めてるリーダーみたいな人がいるんでしょ?」
「ええ、先生…俺の剣の師ですね。会いますか?」
頷く。
それから唯花の顔を覗き込んだ。
私も、解る訳じゃない。
寧ろ解らないことの方が多くて、風早がいるからいつも通りでいられるだけだ。
もしここに唯花と二人だけだったら、それでも強がってはいただろうけど。
嫌なら無理しなくていいよ、そう言う私と、俺がついてるから平気ですよ、と言う風早。
唯花は眉を寄せたまま、小さく頷いた。
風早に連れられて外に出たら、昨日唯花と那岐と一緒にいたおばあさんがいて。
風早はその人に先生、と呼びかけた。
…あれが?
「風早の先生って…」
「あたしの名は岩長姫ってんだよ。よぉく覚えとくんだね。」
やっぱり聞き覚えは無い。
岩長姫は風早の傍を離れない唯花と、私を見比べている。
「――それにしても、まぁ…子どもってのは、ちょっと目を離すとすぐに変わっちまうもんだ。」
小さい頃に会ったことがあるんだろうか。
風早が苦笑を浮かべていて、唯花は益々不安げになる。
私自身、覚えがないのにそんなことを言われると、どうしていいか解らない。
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