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2008/09/01(月) 21:19:43
侘夜
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「…ありがとうございます。」
政宗様はきっと何でもないことで、本当に、深く考えてはおられないのだろう。
けれどそれが嬉しかった。
打算だとか、そういうものを抜きにして。
舛花が魔王と顔を合わせたのならば兎も角、この子一人は織田の脅威になるまい。
この子がいることで迷惑がかかるような事態も、無いだろう。
「あの、政宗様…志憂を見ましたか?」
「志憂?アイツなら――…山抱えてた。」
山、と思わず首を傾げてしまう。
なんだか心配になってきた。
志憂本人は意志も固かったしやり遂げる気満々なのだろうけれど。
もし意地悪されていたら。
小さい頃からお仕えしていた日々を思い出して、首を横に振る。
意地悪されたくらいでめげてしまうような御方でもない。
「…志憂を受け入れてくれるのがこの武田で、本当に良かった。」
ぽつりと呟いた言葉に、政宗様がこちらを向く。
私は、微笑んだ。
心からそう思う。信玄公がいてくださって良かった、と。
ふと政宗様の前で言ったという事実に気付き、私は慌てた。
これではまるで、伊達より武田が良いと言っているようで。
「あ、あの、志憂にとってというだけでして、別に嫌だとか言うつもりは全く…!」
「………」
私が慌てて弁解するのを、政宗様は黙って見ていて。
呆れられているのか怒ってらっしゃるのか。
どうしよう、と困り果てる私の前で、政宗様はくく、と喉を鳴らした。
思わず目を瞬かせる。
「I see、解ってる。んな必死にならなくても平気だぜ?」
くつくつと笑いながら言われて、私は思わず顔を逸らした。
こんなことで取り乱してしまう自分が恥ずかしい。
やはり調子が、狂う。
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2008/09/01(月) 21:19:31
真田幸村
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「ん、頑張って。俺も気が向いたら相手したげるから。」
ひらりと手を振り、十蔵は某の手を引きながら歩き出した。
まだ某は話をしたかったのに、十蔵は有無を言わさず某を引き摺り。
そして志憂の姿が見えなくなったところで、漸く離された。
十蔵が志憂の手伝いをしていたこと、こんなにも強引な態度をとること。
不可解なところは多々あるが、それよりも文句を言いたくて仕方がなかった。
「佐助にだって言われたんじゃねぇの?依怙贔屓は良くねぇな。」
「っ……」
そんなつもりは、勿論無いが。
だがどうしたって、事情を知らぬ者にはそう見えてしまうだろう。
志憂は姫としてここに来た訳ではない。
黙り込んだ某の前で、すぐにいなくなるだろうと思っていた十蔵は溜息を吐いた。
「随分気にかけるのな。惚れた?」
「なっ!!!」
そんなことあろう筈がない!
色恋沙汰など無縁であったのに、志憂に惚れる、など。
有り得ない、とぶんぶんと首を横に振る。
表情は見えないが、へぇ、と十蔵の声が聞こえた。
揶揄でも忠言でもなく、ただ感嘆とも違う、何とも気の抜けた声。
「つまんねぇなぁ、惚れたとかだったら俺は精一杯協力したのに。」
「なっ、何を言うか!次にそのようなことを口にしたら…!」
「はいはい、志憂ちゃんにも失礼だもんな。」
もう言いませんよ、と呟きながら十蔵は姿を消した。
有り得ない、解っている。
だからこそ十蔵の言葉に頭の中はごちゃごちゃになってしまう。
片手で額を押さえると、思わず深い溜息が零れた。
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2008/07/20(日) 00:11:40
志憂
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どうしたのだろうと思いながら幸村を見つめる。
志憂のことを気にかけてくれたの、かな。
そうだったら申し訳ないと思いながら幸村をじっと見つめる。
「十蔵、珍しいな」
「まぁ、困ってる女の子を見過ごせなかったっていうか」
「本当にありがとう、十蔵」
幸村と十蔵は知り合いのようだ。
知り合いであるのは当然なのだけれど、親しい仲なのかな。
幸村が十蔵、と呼び捨てにしているから。
じっと幸村を見ていることに気づいたのか幸村が笑う。
「十蔵は、真田十勇士の一人だ」
「幸村様の?」
幸村の忍であるのならば、志憂の正体も知っているということか。
成る程と納得をして、それから十蔵に向き直る。
近くに人の気配も感じられないし、大丈夫だと思ったから。
「そう、それは気づかなくてごめんね。わたしは志憂、宜しくね」
「…うん、宜しく」
「君の仲間だったの?どうりで親切だと思った」
幸村にそう言えば、幸村は目を瞬かせて。
でもそれならば、あまり甘えているわけにはいかないかな。
幸村や十蔵の気持ちは嬉しいけれど、わたしは一人でやっていかなくては。
仲良くなりたいという気持ちはあるけれど、
けど、やっぱり志憂も一人で頑張らなくてはいけないと思うから。
「ありがとう、幸村、十蔵。けれど志憂ならば大丈夫だよ」
「志憂…」
「うん、大丈夫。志憂のことはあまり気にしないで」
そう言って、力こぶをつくってみる。
やっぱりあまり上手に出来なかったかれど、それでも。
「わたしは二人に気にかけてもらうような身分ではないから。ありがとう」
志憂“姫”ではなく、ただの志憂だから。
だから志憂のことなど気にしなくて良い。
寧ろ、気にしてもらっては困ってしまうから。
「ううん、これも可笑しいのだろうね。…有難う御座います」
そう訂正をして、笑顔を浮かべる。
折角出来た知り合いなのだし、友人なのだし、仲良くはなりたいけれど。
やはりそれでは色々と困ってしまうから。
不便なこともあるのだな、とそう思う。
けれどまだ大丈夫。
「それでも、時々はお話してくださいね。だって、お友達ですから」
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2008/07/19(土) 23:55:29
伊達政宗
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さすがと言えば良いのかなんと言えば良いのか。
侘夜が着ている着物が思いの他似合っている。
マジマジと見つめていれば気になったのだろう、何かと、侘夜が首を傾げた。
「似合ってるじゃねぇか。悪くないぜ」
「…それは、有難う御座います」
似合わないことはないと思っていたが、あまりに浮いているようでは
どうしようかと考えていた。しかしこれなら問題はないだろう。
侘夜はくのいちだった。ならばきっと、人を騙すことも出来る。
成実や綱元には離すかもしれないが、その他の人間には一々説明する気はない。
バレれば面倒なことになるとわかっているからこそ。
「そのまま、姫としてしっかりと頼むぜ。Princess.」
「ぷりんせす…?」
「そろそろ朝餉でも運んでもらうか」
小十郎と侘夜と成実と四人でとる。
武田のヤツ等は騒がしいから、それがきっと一番楽だろう。
…いや、舛花という忍も一緒にか?
舛花の待遇をどうするかと考える。
侘夜付きの忍ということにしておくのが一番楽か。
「舛花はお前付きの忍ってことでイイのか?」
「…舛花を連れて行っても良いのですか?」
「?ああ、最初からそのつもりだが」
風魔が志憂には着いている。それなら問題はないだろう。
舛花は侘夜の配下であったようだから、侘夜が連れて行くと思ったんだが。
「舛花にもしっかりと挨拶しておかなくちゃならねぇな。朝餉の時には連れて来いよ」
「…良いのですか?」
「ああ、構いやしねぇよ。此処は武田だしな」
小十郎や成実も何も言いやしないだろう。
これから舛花をどうするにしても、ひとまずは九に相談をしなくちゃいけねぇ。
なら、まずはオレ達に慣れることからだろう。
やらなくちゃいえけねぇことは幾つもあるが、それはこれからゆっくりとやっていけば良い。
まずは始めることからだと、そう自分に言い聞かせる。
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2008/07/12(土) 23:24:31
侘夜
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わざと解るようにしているのか、政宗様の忍――九という者の気配が感ぜられる。
様子を見に来たのだろうか。
けれどそれには気付かないことにして、手にしていた鏡を置いた。
朝餉はどうすべきなのだろう。
北条では志憂と氏政様揃って頂いていたけれど。
私が奥州に行く身ともなれば、政宗様と摂るべきなのだろうか。
何にせよ、奥州に戻る予定も聞きたい。
ならば向かうところは一つか、と立ち上がる。
「舛花、政宗様に粗相の無いようにね。お前も連れて行って頂けるか聞かなくては。」
「…解りました。」
もし駄目だと言われたら、信玄公に頼み込んでここに置いて貰おう。
それもまた甘い考えだが、この子のためを思えばこそ。
それに信玄公ならば快諾してくださるだろうとも思う。
はて、と首を傾げる。
小太郎の立ち位置はどうなるのだろうか。
志憂が姫で無くなる以上、志憂の忍だと言う建前は通用しなくなる。
名目上はやはり真田忍隊の一員、だろうか。
もし渋るとしたら猿飛くらいなものだろうけれど、大丈夫だろうか。
そこまで考えて、それより自分の心配だなと思い直す。
私が下手を践んでは志憂にも迷惑がかかる。
織田の注意を、こちらに惹き付けなければ。
考え事をしながらだとすぐに辿り着いて。
戸を軽く叩くと、入れと声がかけられる。
失礼しますという断りと共に入った部屋では、丁度政宗様が身支度を調えられたところだった。
「…お早う御座います。今起きられたのですか?」
「まさか。少し身体を動かしてたんでな。」
成る程、と頷く。
いついかなる時も鍛錬を忘れ得ない。
見習いたいものだ。
そう思ってからはっとして、首をふるふると横に振った。
私が励むべきは寧ろ、芸事だ。
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2008/07/12(土) 23:24:15
真田幸村
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「いい?旦那。姫さんが慣れない仕事してたら気になるだろうけど、手出しちゃ駄目だよ。」
「む……しかし手を貸すくらいならば…」
「姫さんが北条の姫だって言ってないんだから。端から見てれば旦那が贔屓してるようにしか見えない。」
そんなことしたら姫さんがとやかく言われるから控えること、と釘を刺される。
暫し言葉に詰まって唸っていたが、最後には頷いた。
確かに志憂に矛先が向くのは本意でない。
それから佐助と別れて自室に向かっていると、ふと立ち止まる。
井戸のところに志憂と、そして極めて珍しい人物を見つけた。
「お友達、ねぇ…志憂ちゃん、割と楽観的なのな。」
「そう?」
会話が聞こえてきて、思わずそのまま聞き入ってしまった。
立ち聞きなど不粋と心得ているのに。
そこにいるのが十蔵だと解ったので。
「俺は筧十蔵。十蔵さんって呼べ。偉い人だ。」
「十蔵さん?」
「…嘘、ごめん。下っ端だから十蔵でいいよ。」
「それを言ったら私だって変わらないよ、始めたばかりだもの。」
そちらに向かうべきか否か、迷う。
十蔵と志憂が和気藹々と話しているのが何処か恨めしくて。
だが一歩踏みだそうとした時、つい先程の佐助の言葉が頭を過ぎる。
――旦那が贔屓してるようにしか見えない
踏み留まろうとして、何度も何度もあの佐助の厳しい顔を思い浮かべる。
だが本人がここにいないのでは効果も半減するのか、結局某は井戸の方に歩いて行っていた。
「――おっとぉ、これはこれは…」
「幸村様?」
驚いている二人に向けて笑う。
楽しそうだなと告げて、傍らにしゃがみ込んだ。
何故、もっと仲良くしたいと思うことがいけないことなのだろう。
解っているのに認めたくなくて、某は頭の中で悩んでいた。
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2008/07/11(金) 23:10:00
志憂
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梅には一人で大丈夫だと言い切って来てしまったけれど、
やっぱり一人では大変だったかもと冷たい桶の中で洗濯をしながら思う。
「なんだか、面白いね」
汚してしまったものを綺麗にするというのは楽しい。
北条ではやらせてもらえなかったことが、此処では出来ている。
まだまだ出来ることも少ないだろうけれど、少しずつ覚えていきたい。
色んなことが出来るようになって、それで多くのことを知っていって。
一緒に洗濯をしてくれている人の名は、なんというのかな。
教えてくれたいのだけれど、凄く気になる。
「手伝ってくれてありがとう、一人より君と一緒の方が嬉しいよ」
一人でやっていれば、やはり少し寂しかったかもしれないもの。
あまり喋ってはくれないけれど、それでも一緒にいてくれるだけで嬉しい。
何処の誰かわからないけれど、後で教えてくれるかな。
水の冷たさに指先が凍えてきて、けれどそれもやはり楽しい。
でも楽しんでいるだけでなく、早く済ませなくては。
きっとまだ、仕事はあるだろうから。
「わたしね、志憂と言うの。今日からお世話になるね」
どう呼べば良いのだろう、お館様で良いのかな。
一寸止まって考えていれば、男の人が小首を傾げた。
此処でお世話になるね、と告げてからそれからふと空を見上げる。
きっと今日は良い天気で、良い一日になるね。
小田原で見上げる空とは違うけれど、けれど。
「…綺麗な空だね、良い始まりになってくれそう」
今日から始まる、新たな生活。
わたしは多くのモノに別れを告げて、そして多くのモノと出逢う。
今はただ、心の奥に仕舞いこんで。
何時かきっと、振り返るから。
小さく息を吸って、それから大きく息を吐いた。
「君と出逢ってお友達になれた。うん、良い出だしだね」
お友達だと思っても良いかな?
もしかしたら凄い人かもしれないけれど、それでも。
こうして手伝ってくれたのだもの、それなら良い人だろうし。
うん、一方的に友達と思うのならば構わないよね。
そう決めて一人頷いた。
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2008/07/11(金) 22:26:54
other
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「それ、前見えてんの?」
問いかけてみると、相手は止まった。
それから、ごめんね顔が見えないから回り込んでくれる、と言われて。
仕方なく俺は少女の横まで移動した。
「そんな多いと洗いきれないでしょ、一人で。…手伝おうか?」
「ううん、わたしの仕事だから。」
にこりと、少女は微笑んだ。
俺はそれに拍子抜けして、頭を掻いた。
けど人のいい俺はどうしても放っておくことが出来なくて。
少女が持っていた大量の洗物の半分くらいを無言で持ち上げて、歩き出す。
「あっ、」
「俺が勝手に手伝ってるだけ。言われたらそう言うから、気にしなくていいぜ。」
洗物なら慣れてもいるし。
そう告げて、俺は井戸に向けて歩き出す。
途中で振り向いて、早く洗って干さないと皺になる、と注意を投げかける。
少女は素直に頷いて、残りの洗物を持って俺の後ろについてきた。
北条から落ち延びた姫さんだと聞いたから、どんな高飛車かと思ったが。
意外と普通。
いや、本気で侍女の仕事しようとしてるところを見たら、割と異常、か。
少し期待はずれだなと思いながら歩いて、井戸に辿り着く。
空を見上げると雲は無く、よく晴れている。
すぐに乾くだろう。
「君は?」
「ああ…俺は……いや、気にしなくていい。大したことじゃねぇし。」
知らない方がいいよ、と呟く。
少女は首を傾げて、どうして、と問うてきた。
答えるべきか迷ったので、黙殺しておく。
井戸から水をくみ上げて、桶に移す。
ほら、と渡すと、少女も同じようにし出した。
で、この“元”姫の“元”くのいちが、姫になるんだったか。
お互いさっさと投げ出せばいいけど。
人間、自分の生き方偽るなんて出来っこないんだ。自分のことを棚に上げる。
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2008/07/10(木) 21:36:14
伊達政宗
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お早うございます、と声をかけられてああ、と返事を返す。
握っていた木刀を九へと渡して、オレを見ている小十郎を見遣る。
「どうした?」
「いえ、侘夜姫のことでご相談が」
侘夜姫、という小十郎のその呼び方に笑ってしまいそうになる。
そういえば、そうだったな。今朝からもう、アイツは姫なのか。
アイツが姫としてこれから生きて行くということも想像出来ないが、
もう一人の姫だったアイツもどうしてるんだか。
首に巻いた手拭で汗を拭いつつ九を見る。
九は一つ頷いて姿を消した、侘夜を見に行ってくれたんだろう。
「で?」
「舛花という忍は如何なさるので?」
「ああ、一緒に連れて帰るぜ」
「侘夜姫の忍ということで宜しいので?」
そういうことに、なるだろうな。
…しかし、そうなると武田での風魔は何になるんだ?
そう考えているとパタパタと足音が聞こえて来る。
其方を向けば、籠に大量の洗物を抱えた侍女、が。
「…志憂?」
「あ、お早う御座います。良い朝ですね」
顔は洗物のせいで見えないが、やはり志憂だったらしい。
楽しそうな声でそう返してくる志憂を見つめ、目を疑う。
確かに侍女になるとか言ってたが、本当にやってるのか。
「伊達様も洗う物がありましたらどうぞ」
「…お前、一人でそんな量のもん抱えてるのか?」
「集めだしたら止まらなくなってしまって。どんどん出して、と頼んでるの」
楽しそうな志憂の声に、思わずため息が出る。
まぁ、姫さんがこういうことに憧れる気持ちもわかるがやりだしたらどうせ
辛くてすぐにやめちまうだろう。だったら、量は少ない方がイイはず。
「後で後悔するぜ?」
「何故?…ああ、そろそろ朝餉の時間では?侘夜姫様もきっとお待ちですよ」
志憂はそういうと再びパタパタと歩いて行ってしまった。
前が見えてるのかは謎だが、真っ直ぐ歩いてるんだから構いやしないだろう。
「…行動力のある女子ですな」
「まぁ、それが何時まで続くかだよな」
どうせすぐに無理だと投げ出すだろう。
志憂も、侘夜も。オレはそう踏んでいるが。
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2008/07/10(木) 21:24:13
other
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「あんた、そんな細腕で何が出来るの?」
出た、豊さんの嫌味。
あたしなんかは慣れっこだけど、そんなことを突然言われたねえさんは目を瞬かせている。
確かにねえさんは腕も細いし、もう仕事なんて何も出来なさそうな方だけど。
元々が姫だったんだし、これはもう仕方がないっていうか。
昨日の夜の内にみつ姉さんには相談しておいたけど、姉さんとあたししか知らない。
志憂ねえさんが、姫様だなんて。
「北条に仕えてたらしいけどね、仕事も満足に出来てたんだか…」
ねえさんはしばらく目を瞬かせていたけれど、やがてにこりと微笑んだ。
それからぐっと握りこぶしをつくってみせる。…あまり出来てないけど。
「やってみなければわからないでしょう?」
「…それもそうね。じゃあ、今から洗物をして来て」
桶と板の場所を簡潔に説明すると、豊さんは踵を返してしまう。
この時間帯は、あたしは厨で料理をしなくちゃいけない。
それに、洗物をして来て、と豊さんがねえさんに言ったということは、
ねえさんに一人でやれってことだ。
ねえさんが豊さん相手に怯まなかったからだろうけれど、酷すぎる。
他の皆も豊さんが立ち去った後でもこそこそと哀れみの声を上げていて。
多分、北条の生き残りだというねえさんに接する態度がわからないんだろうけど。
「ねえさん…」
「洗物って、着物だとかを洗えば良いのだよね」
小さな声でねえさんが聞いてくるから、それに頷く。
どうしよう、ねえさんが一人でなんか洗物をしていたら、
真田様や武田様に怒られてしまう。
豊さん、いくらねえさんの正体を知らないとはいえ、酷すぎる。
あたしの焦りが通じているのかいないのか、ねえさんはただ笑ってて。
「下穿きも洗うの?ふふ、楽しそうだね」
本当に楽しそうに笑いながらねえさんが、言う。
どうしよう、全然気にしてない。楽しむ気満々だし。
ねえさんは他の人が持って来てくれた籠を受け取り、ありがとうと微笑むと
洗物を集めてくる、と部屋を出て行ってしまって。
あたしはどうしようと立ち尽くしたまま。
とりあえず、追わなくっちゃ…!
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