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Innocent Days

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交換日記 nikkijam

2008/09/07(日) シャノア
タイトル みどりいろのやさしさ-009 今日の気分end



「関係ない、ねえ」
「・・・」

くつくつと喉の奥で笑うルキアーノにシャノアは目を細める。
さっさと帰ってくれれば良いのにと思いつつも、自分たちの方が去ろうとは思わない。
そちらの方が手っ取り早いのだが、それでは逃げたようにも思われて嫌なのだ。

「彼はそう思ってはいないようだが・・・、まあ、それを言うのは野暮というところ」
「・・・」
「君の汚名返上の働きに期待しているよ、ローゼンブルグ卿」

そう言うと、ルキアーノはあの下卑た笑みを浮かべて踵を返した。
彼が完全に食堂を出て行った後に、漸くシャノアは椅子に腰掛けた。
そして柳眉を寄せたまま、不機嫌そうな顔をしつつミルクの入っているコップに口を付けた。

「ほんとに何しに来たんだか」
「・・・ああ」
「どうかしたの?ジノ」

ごめんね、あたしのせいで嫌な思いさせちゃって。
ジノの表情の陰りがルキアーノに絡まれたからだと受け取り、シャノアは申し訳なさそうな顔をした。
するとジノは慌てて、「シャノアのせいじゃない」と早口に言った。

「でも、」
「あっちが勝手に絡んでいただけだ、シャノアが悪いわけじゃあないよ」
「・・・」
「一人のときに絡まれたわけじゃなくて良かったしな」

だから気にするな、とジノはそう言うと快活に笑った。



2008/09/07(日) other
タイトル どうして神様は降ってこない-006 今日の気分ロイド



「忘れれば、・・・」
「うん?」
「・・・楽になれるでしょうか」

唇を離せば、カサンドラのそんな言葉が零れた。
ロイドは「そうだねえ」と言いつつ、カサンドラを引き寄せる。
抱きしめて、後頭部に回した手で顔を自分の肩に押し付ける。

「少しは、楽になると思うよ僕は」
「・・・」
「忘れることが、悪いわけじゃあないから」

このままではカサンドラが壊れてしまいそうだから。
だから、忘れてしまえば良いのだ。
僅かな時間だけでも、その事々からカサンドラを引き離せるのだとしたら。

自分でも、正しいことをしているとは思えないけれど。

「君が忘れようとしたって、・・・誰もそのことを責めたりはしないから」

だから忘れることを恐れることはない。
ロイドはそう言って、涙で濡れた頬を撫でる。
多分きっと、戻れなくなるのだろうと思う。
自分も、カサンドラも――多分きっと、以前のようには。

けれど、彼女にとっての一番最善なことは分からない。
こうする以外の方法は結局のところ、思いつかなかったのだ。

「・・・私は、」
「忘れよう、カーサ」

全部全部、忘れてしまえば良いから。
涙で揺れるその瞳を見たくなくて、ロイドは遮るようにして唇を寄せた。
多分もう、戻れないんだろうなあとぼんやりと思いつつ。


2008/09/07(日) カサンドラ
タイトル どうして神様は降ってこない-005 今日の気分end



敬虔と言えるほど神という存在を信じていたわけではない。
カサンドラの心棒は科学だ、はっきりと証明できない不確かで理性的でないものは信頼するには何処か心許なかった。
しかし信じていないといえば嘘になる、やはり何処かで縋っていた自分が居たことも知っている。

このどん底から神は救いだしてくれるのだろうと。
これは天罰なのだろうと。
許されたのならば光明が差す日もくるのだろうと。
信じていなかったと断言するのは難しい。

「都合よく、祈るため助かるための装置として用いていたことは認めざるを得ません」
「神そのものもその加護もあるわけがないって知っていたんだねえ」
「そんなふうに思っていたからでしょうか」

疑う者にこそその御威光を放ってくださればよかったのに。
ロイドの胸に額を押し付けて、カサンドラは静かに神への恨み言を口にする。
そのくぐもった泣き声に対してロイドはそっと同意して背を撫でた。

「本当だねえ。今すぐにでも此処へ降りてきて君を救ってくれたらいいのに」
「わたし、なんて」

それよりももっと別に助からねばならない存在が居たはずだとカサンドラは無言のうちに訴える。
ルルーシュやナナリー、そしてヘクトルが救われたのならカサンドラも救済されるのであり、それこそが最良の形だったのだろう。

「もう、」

密着していた身体を離し、ロイドはカサンドラの頬に手を添えると上を向かせる。
涙に濡れた藍の眸がぼんやりと自分を捉えていた。

「忘れよう。事実までとは言わない、でも哀しかったこと全部沈めちゃいなよ」
「…忘れる?」
「うん、忘れる」

さきと同じ温い感触が頬を這う。
眼を細めるカサンドラが言葉を発するよりも早くロイドがその唇を塞いだ。
こんな縋り方は良くないと解ってはいつつもこの温度を拒絶することはできなかった。



2008/09/07(日) other
タイトル みどりいろのやさしさ-008 今日の気分ジノ



血のように紅い双眸が険しげに細められ、それがルキアーノへと向く。
その色彩にか、或いはシャノアの意気にか。
ルキアーノは肩を揺すって上擦った笑い声をあげると、「いいねえ」とにんまりとして唇を歪め舌なめずりをした。

「君も守ることで真価を発揮するタイプの人間かね?それでもまだ足りないね、そんな弱い気持ちじゃあ簡単に折れてしまうよ」
「真価も何もありません」

冷ややかに応対するシャノアに気を悪くしたふうでもなく、ルキアーノは今度は打って変わって静かに笑った。
ただ幾ら笑い方を変えたところで彼の性質というものは変わりはしないし、受ける印象も同様に変化しない。
残忍で非倫理的、騎士道精神に悖るその性状はありありとその笑みに滲み刻み込まれているのだから。

ジノもいいから座って、とシャノアはこれ以上ジノがルキアーノに食って掛からぬよう促す。
シャノアの気持ちも解るだけにそうしてやりたいのは山山だがこのままでは腹の虫が治まらぬジノは、でも、と渋るのだが、シャノアに名を呼ばれて渋渋腰を下ろした。

「おや、随分としっかり躾けておられるようだ。君はもう立派な忠犬だね、ヴァインベルグ卿」
「ブラッドリー卿、お止めください。貴方は何がしたいのですか?あたしの様子を窺いに来たのならもう満足なのではないでしょうか。自分に向けられる非難は覚悟しています。けれどジノへの言葉は即刻取り消していただきたいですね」

彼は関係ない、とシャノアはきっぱりと言う。

それはシャノアがジノを助けようと、ジノを想ってのことだと解る。
大切だから傷つけられることがないようにと。
ジノがシャノアを庇って決闘を申し込んだ心理と恐らく大差のないものだった。

けれどもきっぱりと“無関係”と言われてしまうとやはり寂しさが募った。
彼女の言葉には悪意が無い、寧ろそれは慈愛に満ちているというのにこう感じてしまう自分の思考に嫌気が差したが、ジノはシャノアの腰を折るのも嫌でじっと話に耳を傾けていた。

ただ何かあったときのための備えと覚悟だけはしていた。
例えば、あのナイフが彼女に向くことがあれば身を挺してでも守ることができるように、と。


2008/09/06(土) シャノア
タイトル みどりいろのやさしさ-007 今日の気分end



「待って、ジノ、」

何もジノが自分に代わってそのようなことをすることもない。
わざわざ面倒を被る必要はないのだ。
さすがにシャノアも黙って入られずに口を挟むのだが、ジノは聞いてくれる様子はなかった。

「分かってるのかね、ヴァインベルグ卿。私が殺しの天才だということを」
「そんなことは関係ありません。貴方がシャノアを苛むというのなら決闘を申し込むしかありませんから」

そう言ってルキアーノは趣向の凝ったナイフをちらつかせる。
いつでもそのようなものを持ち歩いている人間だ。
人格も破綻している、何も相手にする価値などないのだ。

「ジノ、良いから」
「シャノアが良くても、黙ってられない」
「だからってジノが代わりになんてならなくても良いの」

これぐらいのことは言われると思っていたことだ。
もちろん、だからといって何も思わないというわけではないが。
しかしそれでも、ジノに代わりをして欲しいなどとは全く思っていないのだ。

「良いから、ね?」

シャノアはそう言ってジノの腕を引きつつ、喜色満面といった様子のルキアーノを一瞥した。
彼は根本的に苦手だった。
出来る限り、関わることを避けていたぐらいだ。
突っかかってくるのなら、何も今ではなく自分一人のときにしてくれたら良かったのに、そう思わずにはいられなかった。


2008/09/06(土) other
タイトル どうして神様は降ってこない-004 今日の気分ロイド



「・・・神様なんて、いないんだよ」

軽く抱き締め、あやすように背中を軽く叩きながらロイドは言った。
科学的ではないため、そういったものの存在は端から信じてはいない。
けれど、もし仮にいるというのなら、マリアンヌが暗殺されてからの二人には、
あまりにも加護がないように思えてならない。――幼子の二人が一体何をしたのだろうか、と。

だから、神などやはりいないのだ。
ロイドはそう思い、そう口にする。

「もし神様がいるなら、ルルーシュ殿下もナナリー殿下も、その加護を受けないわけがないんだからさあ」
「・・・だから、酷い、神様は」
「信じて縋れば縋るほど、その加護は遠のくのかなあ」

そのあたりのことは詳しくないから知らないけどねえ、ロイドはそう言いつつ、
カサンドラの頬を滑り落ちる涙を服の裾で拭った。
どうしたらその涙を止めることが出来るだろうか、と。
一体何度考えたことだろうか。
しかし答えは見つからない、科学のようにすっきりと答えは見つけられないのだ。

「・・・信じる者は、救われるはずなのに」
「君は神様を信じてたの?」

もしそうであるなら、彼女もまた、結局は神に救われていないのだ。
いるわけもない、そう確かに思うのに――カサンドラに加護がないと思えば、ああどうして、と思わずにはいられなかった。


2008/09/06(土) カサンドラ
タイトル どうして神様は降ってこない-003 今日の気分end



「そこにはありませんよ」

くぐもった声がロイドの動きを制するようにかかる。
シルエットでしか解らない彼の方を見て、それからゆっくりとカサンドラは立ち上がった。

「茶葉がね、切れてしまって。新しいのは此方にあるのです」

ロイドが探していた棚の一つ下を開けて、カサンドラは両手に乗るサイズの缶を手渡した。
こうして何の変哲も無い会話をしているうちにも涙は溢れてくる。
掌で拭うようにしても、止め処なく溢れてくるものだから、幾ら室内が暗くてはっきりとは見えなくともそれをロイドに見られているのも見せているのも嫌で彼女は顔をふいと背ける。

カーテンの合わせ目から漏れる光線が一瞬カサンドラの眼の辺りを過ぎ去る。
照らし出される双眸に、ロイドは見て見ぬ振りを続けることは不可能だった。

「、…な、」

背けようとした顔はロイドの手によって阻まれ、慮外に頬に生暖かい感触が走った。
最初は何をされたのか解らなかったのだが、

「水っぽい、それで味が薄いねえ。これ、哀しいときの涙だねえ」

そうロイドが言ったとき初めてあの感触は舌であったのだと気がついた。
何をするのかと問うより早く抱きすくめられて反駁は口中で霧散して、結局はロイドの体温に更なる涙が催される。

「僕は君に何もしてあげられなかったね」
「な、ぜ…ロイドは悪く、ない」

予想外の言葉。それが上辺だけの言葉でないことが解るから更に哀しみは募る。

「神様は、」

酷い、恵みはどこにあるのでしょうか、とカサンドラは呻くように恨み言を吐きだす。


2008/09/06(土) other
タイトル みどりいろのやさしさ-006 今日の気分ジノ



表情を歪めたシャノアに気がついて、ジノはその視線の先を追った。
下卑た笑いを浮かべて自分たちへと歩み寄るルキアーノ。
彼が何かを言うより早く、ジノはすっくと立ち上がり、「何か御用ですか、ブラッドリー卿」と冷ややかな物言いで尋ねた。

「御用?御用なんて大したものじゃあないがね」

顎に手を遣り、眼を細めるルキアーノの視線はジノをすり抜けシャノアへと向かう。
身構えるシャノアに更に喜悦を滲ませながら彼は、ふーんと一人納得したように声を上げた。

「では何でしょうか?彼女はまだ静養中の身です、卿の好奇心に弄ばれるのは私としては見過ごせません」
「ヴァインベルグ卿、その物言いこそ見過ごしておけないね。私はただ、彼女がどんな顔で逃げ帰ってきたのか、また今どんな顔で日日を過ごしているのか、それを見に来ただけなのだよ」

別に逃げ帰ってきたことに対してどうこうと言う気は毛ほどもない、と高い声で笑った。
その言葉にシャノアが唇を噛締めていることにジノもルキアーノも気付いていなわけがない。
ただシャノアの様子に対する反応は対照的で、忸怩たる思いのシャノアを苛んで愉悦に浸るルキアーノ、そんな彼に憤るジノだ。

「ブラッドリー卿!」
「おお、怖い。逃げ帰ったことを責めるつもりはない。何といっても命こそ最も大事にすべきものだからね。ローゼンブルグ卿の判断は正しいよ」
「……」
「おや、だんまりかね。お褒めに預かり光栄です、くらい以前の君なら返してくれたと思ったのだが、黒の騎士団に牙を折られたか、それとも置いてきたか」

哄笑が沸き起こる。
悪意の籠った言葉に拳をきゅっと握り締めて耐えるシャノアを思えばジノは今すぐ此処でルキアーノを殴り倒してやりたい気持ちだった。
こんな言葉を浴びせ掛けるなど正気の沙汰とは思えない。
騎士など名ばかりで彼には多くが欠如している、そんなのは同じ騎士としても許せなかった。

「ブラッドリー卿、そこまでにしていただきたい。これ以上彼女を苛むようでしたら、後は私が彼女に代わってお引き受け致します」


2008/09/06(土) シャノア
タイトル みどりいろのやさしさ-005 今日の気分end



「成長期にも限度があると思うんだけど」

シャノアは呆れたように溜息を吐きつつ、サンドウィッチを口に運ぶ。
特に空腹だったわけではないのだが、食べ始めれば自然と食欲が湧いてきた。
が、もちろん食べるスピードなどはジノの方が何倍も速い。

「これでまだジノは昼ご飯も食べるつもり?」
「当たり前だろ。シャノアだって食べるんだからな」
「・・・太るよ」

いくらジノでも食べ過ぎれば太る。
戦闘時以外でもトレーニングなどはもちろんあるが、デスクワークも多いのだ。
動かなければ食べた分だけ脂肪になる。
とは言っても、ジノがそういったことを気にしているようには思えないが。

「別にこれぐらいじゃあ太らないって」
「どうだか」
「シャノアはもっと食えよ、太るぐらいがちょうど良い」
「な、ジノの馬鹿!何言い出すの!」

常日頃から体重はやはり気にしているのだ。
それをそのようなことを言われればやはり焦るし、腹立たしくもある。
そうして食って掛かっていると、不意にこちらへと近付いて来る足音が聞こえてきた。

「・・・、」

そしてシャノアはちらりと視界の隅を掠めたその橙色に柳眉を寄せた。


2008/09/06(土) other
タイトル どうして神様は降ってこない-002 今日の気分ロイド



「でも、それはただの自己満足。救われるとしても、それはわたしだけです」
「君がそう思うならそうなのかもしれないけどね。今となってはルルーシュ殿下やナナリー殿下に聞けないから」
「・・・」

カサンドラは顔を伏せる。
ロイドはそれを横目にソファの向かい側に座った。
距離はあまり離れてはいないが、この部屋の暗さのために俯けてしまった彼女の表情は窺えない。

「でも、ルルーシュ殿下たちは君の手紙を楽しみにしていたかもしれない」
「・・・」
「自分たちが知り得ない本国でのことだとか、他のご兄弟のことだとか。
 それを聞くことを楽しみにしていたかもしれないけどねえ、僕はそう思う」

それに僕はナナリー殿下は少なくとも喜んでいたと思うよ。
ロイドがそう言うと、カサンドラは肩を震わせた。
泣いている気配が僅かに伝わってくる。
しかしそれもきっと知られたくは、気付かれたくはないのだろう。

部屋は暗い。
暗すぎると思うぐらいに、暗いのだ。
気付かないふりをしておこう、ロイドはそう思いながら、暗闇になれてきた目でティーセットを探す。
不味いと言われるとは分かっているのだが、何かしなければ手持ち不沙汰で仕方ない。


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