ジンシャクーロンエステルコウヤ***

イカレ歯車

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交換日記 nikkijam

2008/07/18(金) エステル
タイトル 3-02 今日の気分end


…考えられるのは、彼女が魔法被害者であるかもしれないという事
つまり、元は男性だったが、例のレドレナの魔法にかかり女性の姿に変えられてしまっている可能性がある…と。
ありえない事ではない、レドレナは何をするか解らない問題児…
そしてそのレドレナに身体を戻してもらう為、新人として入ったのだろう
実際、魔法で女性の身体に変えられてしまったメンバーも居る事ですし。
そう当たりをつけ、まだ正体の解らない新人に問いかけたのだが…

「えっ、ええー!?ち、違います!!私は正真正銘、生まれた時から女です!」

返ってきたのは・・・ありえないと考えていた事を、ありえない真実に結びつけられてしまう返答だった
大袈裟な動作で質問を否定する彼女と、その質問にジンシャが呆れを見せていた

「いやいや、流石にそれは無いと思うぜ…」
「あ!でもレドレナに魔法をかけられているのはあってますよ!ただ、かけられちゃったのは私の仲間達なんですけど・・・」

ジンシャに呆れられたのには少し腹が立ったが・・・今更になって、馬鹿な質問をしてしまった自分にはもっと腹が立った。
あのような質問をしてしまったのは、女性に強い意志などない・・・だから、此処に入ってこられる筈が無い。どこかでそう考えていた所為かもしれない
別に女性が嫌いな訳ではない。ただ・・・頼りない存在だと思っているから、入ってこられると面倒だとも感じていた

「もしかして・・・頼りなく見えますか?大丈夫です!私は女ですけど、皆さんに負けないくらい頑張りますよ!」

先ほどの僕の質問に怒りもせず、むしろ友好的に語りかけてくる彼女に呆気をとられてしまった
本来ならあの質問の、彼女の返答の後にすぐに誤らなくてはいけない所なのだが…この状況ではどうやって切り出していいかわからない。
それと先ほどから思っていたのですが…この新人、少し元気過ぎるような…
まあ・・・誰でも最初の内は、目的の為に頑張ろうとこの様になるのかもしれませんが

「だから…えぇと」
「…特別対策班調査係、エステルです」
「エステルさん?改めまして、コウヤです!エステルさん!宜しく御願いします!!」

確かめるように名前を呼んで来る彼女の声を聞きながら、こうなる事なら最初からこの真実を受け止めて、ジンシャの介する自己紹介をした方が面倒ではなかったな・・・と後悔した



2008/07/18(金) エステル
タイトル 3-01 今日の気分next



この魔法犯罪特別対策班に新人が入るという噂を聞いたのは、ほんの数日前。
その時は考えもしなかった、まさかその新人が……

「本日からこちらに配属になりました、コウヤといいます。一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします!」

烏羽色をしたセミロングの髪――
体つき、声色――
どう見ても女性としか思えない人物が、目の前に立っている
……ありえない。此処に…この変人の巣窟と呼ばれているこの場所に女性が入るだなんて――

「よーし。じゃ、とりあえず此処に居るメンバーは軽く自己紹介でもしようか」

顔色ひとつ変えずに…とは言っても、元々ガスマスクを着けているジンシャの顔色なんて解る筈もないのですが…
呑気に自己紹介を始めさせようとしている所をみると、彼がこの状況にあまり驚いていない様子が解る

…もしかしたら、ありえないと思っているのは僕だけで、そんなに驚く事でもないのだろうか?
――いや、此処に新人…しかも女性が入るという事は本当にありえない事だろう
いくら公募しているからといって、大人の男も逃げ出すこんな危険な場所に女性がひとりで入る筈が無い
僕は此処であのステラ以外の女性と関わった記憶は一切無いし、それがこの場所に女性は入らないという事実を物語っている
しかし、ジンシャのあの様子を見ると僕が入る以前にも女性が入っていた。という可能性もある…
それでも現在は居ない訳だから、どちらにせよあの新人の入隊はありえないのだ

「…ジンシャ。そこの新人について2、3質問があるのですが」
「ん?なんだよエステル…質問タイムなら、自己紹介の後にちゃんとやってあげ――」
「コウヤ…と言いましたね。お聞きしたい事があるのですが、宜しいでしょうか?」

ただ考えていても埒が明かない。このまま時間が過ぎれば、面倒な自己紹介までしなくてはならなくなるだろう…その前に知っておきたい事がある

「あ、はい!なんでしょう?私に答えられる事であれば、なんでも答えますよ!」

一瞬、きょとんとした表情を見せた後、すぐ返事を返してきた
その横でジンシャが何やらブツブツ言っていましたが、後でなんとでもなるでしょう

「あなたは…」
「はい?」
「レドレナの魔法で、女性に変えられた元男性の方…で、あったりしますか?」



2008/07/11(金) コウヤ
タイトル 2−03 今日の気分



ガスマスクの男はジンシャと名乗った。彼は、魔法犯罪特別対策班の教育係なのだという。コウヤがぬいぐるみの彼とへたり込んでいるうちに、約束の時間を過ぎてしまっていたらしい。
中の見えないダークレンズのガスマスクに始めは驚き、まさかガス被害の凶悪犯罪でも起きたのかと思ったが、どうやらそんなことはないようだ。

「魔法犯罪特別対策班へようこそおちびさん。先輩として言えることはただひとつ、逃げるなら今だ。今なら追わないから」

そんなことを言われたので、コウヤは至極真面目に返したつもりだったのだが、対してジンシャは「じゃあよろしく」と軽く流しただけで終わった。教官曰く、対策班は入ってすぐ(色々な意味で)駄目になる者がほとんどらしい。それだけ危険な仕事ということだろう。


それから、ぬいぐるみの彼について尋ねたりしながら他愛もない会話をしているうちに、別館の二階へと到着した。
本館の方と違って、別館は人通りが少ないようだ。本館と比べると何となく薄暗いような気もする。微かに漂ってくるのは、珈琲の薫りだろうか。
コウヤが興味深げにきょろきょろと辺りを見回していると、隣のジンシャが口を開いた。

「そこの部屋が応接室ね。で、あそこが用具置き場。あっちの奥の方には空き部屋がいくつかあって、そこで生活してる班員もいる」
「そうなんですか! 住み込みで仕事をなさっているなんて、すごいです!」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……まあ、いっか」

班員の皆がいるのがここ、とジンシャは一つの部屋の前で立ち止まった。確かに中から人の話し声が聞こえてくる。
気合いを入れる意味で自分の頬を両手で挟むようにパンと叩くと、緊張していると捉えたのか、扉を開けると同時にジンシャがぽんと背中を優しく押してくれた。

「新人の到着だぞー、全員注目!」

彼がそう言って手を叩くと、室内にいた十数人ほどがそれぞれこちらへ視線を向けた。メンバーを公募しているせいだろう、スーツや制服姿が多い本館と比べて異質な雰囲気があり、多種多様な人々が集まっているような色彩あざやかな印象だ。
ジンシャに促され、コウヤは訓練で仕込まれたようにきっちりと礼をした。

「本日からこちらに配属になりました、コウヤといいます。一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします!」



2008/07/11(金) コウヤ
タイトル 2−02


「あのな、俺から話を持ち掛けておいて、本当に今さらなんだが…………大丈夫か?」

不安そうな様子で教官はそう尋ねてきた。コウヤはぱちくりと目を瞬かせて一拍置いてから、それが対策班のことであると気が付いた。もともとまっすぐだった背筋をびしっと伸ばし、答える。

「大丈夫です、教官! 教官のご期待にそえるように頑張ります!」
「期待というか……ああ、いや、やっぱり何でもない。まあ、お前ならきっと大丈夫だろう。だからこそお前に頼んだわけだしな。頑張れよ」

どこかバツの悪そうな顔でコウヤの肩をぽんと叩く教官に、「はい!」と訓練さながらの姿勢で敬礼を返す。教官は切れの悪い返事を寄越し、元来た通路を戻っていった。
その背中にぺこりと頭を下げ、コウヤも寮の出口へと進む。向かうのはデストア警察署だ。対策班の本拠地は別館にあるそうなのだが、本館のロビーで落ち合う約束になっている。遅れてはいけないと、コウヤは足早にデストアへと向かっていった。

……の、だが。

ロビーで無事に対策班の先輩と落ち合う前に、コウヤは第一の試練に早速ぶちあたってしまった。
コウヤより頭一つ分は背の高い男が、本館の通路でうっかりぶつかった衝撃で尻餅をついたまま、ひくひくと泣いているのである。どれだけ謝って声を掛けても返事が無く、身振り手振りで色々伝えてみても、ただぬいぐるみをぎゅっと握りながら頬を濡らすだけだ。

「もしかしてご気分が優れないとか、吐きそうとか……お医者さまを呼んだ方がいいですか!?」
「…………」

どうしよう、とコウヤはへたり込んだまま口を噤んで考え込む。
どこかひどくぶつけてしまったのだろうか。尾てい骨とか肘の骨とか、そういうとても痛いところか、頭のどこかを床に打ちつけてしまったのかもしれない! どうしよう! 人工呼吸!―――などと考えていると、突然現れた影があった。
コウヤからはちょうど死角になって顔は見えないが、どうやら彼の知り合いらしい。まるで子供をあやすような口調で、何だかやけにこもったような声で、彼に話し掛けている。
そして人影が、男を立たせようとしたのか位置を変えたところで、顔が見えた。

(……ガスマスク?)

その人は何故か、ガスマスクを被っていた。



2008/07/11(金) コウヤ
タイトル 2−01




気温が高ければ湿度も高い、蒸し暑く不快な天気。しかしコウヤにしてみれば、「素晴らしい快晴」である。犬小屋棟、もとい学生寮の各部屋に設置されたドッグケージの中で、だるそうに舌を出している犬――になってしまった仲間たちとは対照的に、コウヤはにこにこしていた。
今日は、国中を荒らし回る大魔法使いレドレナ・リッキーに対抗すべく結成された、魔法犯罪特別対策班への初出勤の日だ。

「何だか色々と噂は聞くけど、行くのは今日が初めてなのよね。どんなところなんだろ?」
「…………」
「楽しみ――だけどっ、そんなふうに浮かれちゃいけないよね! みんなを元に戻す方法をちゃんと探すからね!」
「…………ばう」

暑さに気力を奪われながらも返事をしてくれる優しい元ルームメイトに、丁寧にブラッシングを掛けながら、コウヤの一日は始まった。



―――事の始まりは二週間ほど前。
どこから入り込んだのか、この警察学校の敷地内に突如現れたレドレナ・リッキーによって、その時そこで訓練を受けていた数十人が犬に変えられてしまったのだ。
再びレドレナが出る可能性を考慮して訓練が一時的にストップし、レドレナの被害を逃れた学生たちが大量の犬の世話に追われながら一週間ほど過ごしたところで、教官からコウヤへ対策班の話が持ち掛けられた。
関係者の中で何らかの手を打たなければならないと考えた結果、「変人の巣窟」の一員としてやっていけるだろうと白羽の矢が立ったのがコウヤだったのである。
ある意味不名誉な指名だったのだが、当のコウヤはそんなことを知る由もなく(知ったとしても度胸が試されている等とやる気に変換するだけだが)、その話を迷うことなく引き受けたのだった。



男子寮に比べて女子寮は人数が少ないため、全ての犬の世話が一段落するまでそれほど時間は掛からない。やるべきことを終えたところで、デストアに向かうにはちょうど良い時間になっていた。
そろそろ出発するかと廊下に出ると、教官用の制服を纏った男がひとり、少し渋い顔で歩み寄ってくるところだった。コウヤに対策班の話を持ち掛けた担任教官だ。

「おはようございます、教官!」
「…ああ、おはよう。……その、なんだ、コウヤ」
「はいっ、なんでしょうか」


2008/07/09(水) ジンシャ
タイトル 1−04 今日の気分おわり



「魔法犯罪特別対策班へようこそおちびさん。先輩として言えることはただひとつ、逃げるなら今だ。今なら追わないから」
 ジンシャは多少芝居がかった口調で、茶化して言ったつもりだったのだが、
「逃げませんよう、私はやると決めたらやる女です!」
 返ってきたのはそんな返事だった。敬礼までしだしそうな勢いだったが、実は似たようなやり取りは先月先々月にもあったことはあった。逃げないと断言していた後輩は言って2週間で辞めて行ったが。
 ジンシャはそんな前例も思い出しつつ、「じゃあよろしく」と軽く流した。



「さっきの人、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だよ」
「打ち所が悪くてお怪我でもされていたらどうしましょう」

 どうも先ほどの彼とは、お手洗いに出た帰りに衝突してしまったらしい。
 彼の保護者は青汁を10杯も飲み干したような苦渋に満ちた表情で彼の身元を引き受けたが、コウヤは班の部屋に行き着くまで何度かそんなことを訊いた。どう見ても自分より年上の男を泣かせてしまったことに負い目を感じているのかもしれない。
 あまりにもコウヤが気にしているようだったので、彼――サラヴというのだが――は対策班に班員同然に出入りしている、科学班の奴の甥っ子だと説明してやった。細かい事情はありすぎるほどあるので省略し、「後で飴でも持って行ってやれば機嫌を直すだろう」とも教える。どちらかといえば冗談のつもりだったのだが、コウヤは矢張り真剣に受け止めたようで、
「じゃあ部屋に着き次第飴を持って謝ってきます!」
 そう真面目な表情で言ってのけた。
 新人に冗談は通じない、そう心のメモに留めておくことにしよう。
 しかしその一方でジンシャは思う。何でも鵜呑みにしそうだから、からかい甲斐はあるだろう、と。


2008/07/09(水) ジンシャ
タイトル 1−03


 お互い何も言わない。ジンシャはジンシャで彼女が起き上がるのを待っていたのだし、向こうは向こうでジンシャからのアクションを待っていたようだからだ。
 一通り確認を終えた後でジンシャは男を置いて彼女に手を差し伸べた。
「立てる?」
「あっ……はい、問題ありません!」
 夢から覚めたように、新人の女は跳ね上がるように自力で直立した。行き場を失ったジンシャの手は宙をさ迷って、結局は元の鞘に戻ることになった。
 腰に挿していた棒状の物、あれは剣だろうか? 読めはしなかったのだが異国の言葉で書かれた札が何枚も貼られている。それが彼女が立ち上がった振動でがちゃりと音を立てた。
「ご親切ありがとうございます!」
 体育会系の所作で直角に近い形で礼をするものだから、乱れていた彼女の髪はますます解けてしまった。しかし当の本人はそれを気にする様子もない。
 ジンシャはついからかってやりたい気分に駆られた。
「ご親切ついでに道案内もしようか? 新人さん?」
「ええと……?」
 新人は額に手を当て暫く考えた後、急にその言葉の意味に気付いたようで声を上げた。とっさに「そうとは露知らずお世話様です!」などとよく分からないことまで口走っている。



「俺はジンシャ。魔法対策特別班教育係のジンシャだ」
「本日からそちらに配属になりましたコウヤです。宜しくお願いします!」
 新人――コウヤはそう言って笑みを浮かべた。化粧っ気はないが愛嬌はある顔だ。
 ジンシャはレンズの奥からそんな彼女を見て、右手を出した。握手を意味しているのに多少時間がかかったらしく、新人は挙動不審におろおろしてから結局ジンシャの手を両手で握って返した。そしてにこにこと人懐っこく上下に手を振ってみせる。

 若さ故か元々の性質によるものか、どうも元気が空回りしている。
 ジンシャがコウヤに抱いた第一印象は概ねそんなところだった。



2008/07/09(水) ジンシャ
タイトル 1−02



 その間新人が何をしていたかといえば、彼女は既に本館に入ってはいたのだった。
 後になって聞けば、時間の数分前には着いていたのだという。

 対策班の待機室がある別館へ帰ろうとしていたジンシャが、床にへたり込んだ女を見付けるまでにそう時間はかからなかった。時間にして10時5分。待ち合わせの時刻から約5分後のことだった。
 本館1階の曲がり角で、まずジンシャは奇妙な光景に出会した。
 上背のある男が床に座り込んで泣いている。
 ぎりぎり青年の部類に入る20中頃の男が兎のぬいぐるみをしっかと握りながら声も立てずめそめそ泣いている。見ていて気持ちのいい物ではない。
 好んでかかわり合いになりたくない部類の人種には違いないのだが、残念なことに見て見ぬ振りをするわけにはいかなかった。
 何故なら一見情緒不安定、危ない大人の彼はジンシャの知り合いだからである。

「サラヴ、お前また転んだのか?」
 男に話しかけてはみるが返事はない。しかし返事はない代わりに反応はあり、彼は濡れた青い目でジンシャの姿を捉えると、長い腕でジンシャのズボンの裾を掴んで自分の近くまで引き寄せた。そして涙の痕が入った顔で口を一文字に結んだ。また泣いてやるぞという合図にも見える。ジンシャは「痛いの痛いの飛んで行けー」などとあやすのだが、内心では保護者の所に連れて行こうなどと思っていた。ジンシャは顔で怖がられることが多いのだ。
「じゃあサラヴ、お兄ちゃんと一緒に叔父さんのとこ行くかー?」
 ジンシャがその腰辺りに位置する頭を撫でてやると、彼はぬいぐるみを抱き直してこくこくと頷いた。
「偉い偉い」と空で言い、立たせようとして体勢を変えたとき、
 角を曲がった所に、同じく女が床にへたり込んでいたのに気が付いた。 

 見覚えのある顔だった。気のせいじゃない。間違いなく1度は見ている。
 それは――――写真だ。ここへ来る前に見た写真、今日やって来る新人の写真だ。
(ということは、これが噂の……)
 まさかこんな形で出会うことになろうとは、とジンシャは不躾にも『新人』を眺め回した。突然のジンシャの登場に、大きな赤銅の瞳には僅か狼狽した様子が見て取れる。いや、僅かでなく明らかに戸惑いを感じているようだった。纏め上げられた艶やかな烏の濡れ羽の髪が乱れている。


2008/07/09(水) ジンシャ
タイトル 1−01




 今回の新人は中々に骨がある奴のようだ。
 まさかあの魔法使い相手にここまでの大立ち周りを演じるとは、上出来じゃないか。
 ジンシャは満足げに微笑する。彼女の背に立って今、彼女と初めて会った日のことを思い返していた。
 あれは――――


*****


 ――――爽やかさの欠片もない、蒸し暑い朝だった。
 デストアの警察署本館の受付の脇で、ジンシャは今日やって来る予定の新人を待っていた。
 時計の針は丁度10時を3分ばかり回ったところだった。
 本館の方のロビーに10時で落ち合う手筈になっている。初日早々遅刻だろうか。そんな度胸の据わった奴ならば、ある意味ではこの職に向いているかもしれない。
 ジンシャはそんな事を考えながら素直に待っていた。

 噂によると今度の入班者は元はと言えば警察学校に入ったばかりの新人、つまり筋金入りの新人というわけだ。まだ若い、それも女だと聞く。それがどういうわけで署の別館にあるような辺鄙な班に参入させられることになったのだろう。こうしてジンシャが迎えに行かなければ、班の場所も分からないに違いない。
 大抜擢、というより大左遷だ。ジンシャは顔も見ない新人に心底同情した。班に入って無事で済んだ人間など恐らく1人も居ない。先月入った何とかいう有名大学出の若者も、先々月の腕に自信ありのボディビルも皆悉く、今は口も利けないような身体(ああ、その通りの意味だとも!)にされてしまったのだから。
 そうでなくとも精神的・メンタル面で倒れる者が多いのも事実。
 悪名轟く『魔法犯罪特別対策班』に望んで来る奴などいないだろう。
 次の新人はいつまで持つだろう、果ては逃げたか寝込んだか、そんなことまで考える始末だった。
 そうこう思索に耽っている間にも刻々と時間は過ぎていく。


2008/07/09(水) ***
タイトル オープニング



(前略)
以上の事から彼こそ現代に甦った史上最高の魔法使いであることが断言できる。
次のページでは彼の起こした奇跡について特集しているので、そちらも併せて見てもらいたい。
尚、ダイモン博物館に所蔵されるミイラをダンスさせたことが、学者達に限らず多くの評判を呼んでいるレドレナ氏だが、我々がそれについて質問したところ、「次はもっと新しいことに挑戦していきたい」との意気込みを見せてくれた。
ダイモン博物館館長は「まさかミイラが踊り出すとは思わなかった。驚いた」とコメントする。


※写真は我々の取材に快く応じるレドレナ・リッキー。顔をお見せできないのが残念だと同氏は語る。

廃刊された『週間魔法使いの友』より抜粋


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