過去の日記
2008年03月(11)
2008年02月(18)
お気に入り
交流所
nikkijamおすすめ
占いカフェ
懸賞ざくざく
人気ランキング
メニュー
プロフィール
メール送信
携帯へURL送信


|
|
「えーっと、いくつか質問良いか。」
「どうぞ、何なりと。」
飛鳥とあげはの言葉に顔を歪ませつつ、手を挙げる新。
いまいちピンとこないけれど、質問でもすれば少しは理解出来るだろうか、と。
「簡単に言えば、その『王』とやらを倒す為に、俺と冴島が必要なんだな?」
「そう。『王』を倒せるのは、『救世主』たる君達2人しかいない。」
「成る程。で、さっきの ―― 何だ、竜巻みたいなのは、俺の因子が生み出した。」
「そうです。」
「正直俺は、自分があれを作り出したとは思えねぇ。結局は、コントロールが出来てないって事だろ?」
そんなんで、役に立つのかよ?と、言葉が続いた。
それには、寸分おかず飛鳥とあげはが頷いた。
「勿論です。ただ、ちょっと訓練は必要になりますけど。」
「僕達だって、生まれてすぐ操れたわけじゃない。訓練してきたからこそ、この力が使える。」
「ふーん……?」
訓練ね……と言葉を漏らす新。
あれを操る為の訓練……一体何をやらされるのかと思うと、少し恐い気もする。
「そういや、蘇芳は風じゃなかったよな。因子にも種類みたいなのがあるのか?」
「ええ、そうです。私の場合、属性は水になります。」
「僕の場合、基本は氣を操る事だけど、若干の応用はきく。冴島さんは……。」
「 ―― ……知らない。」
全員の視線が集まる中、ほのかは首を横に振った。
新自身、さっきのは偶然の産物のようなものだ。
―― あれが発生しなかったら、未だ自分の能力については知らない。
「まぁ……とりあえず、手始めに携帯情報交換しようぜ。」
「あ、そうですね!」
新の一言で、全員が携帯を取り出す。
全員と情報交換をしてから、パタン、と携帯を閉じる。
「俺からの質問は以上。冴島は何か無いのか?」
「別に……。」
「じゃぁ帰ろうぜ、俺腹減った。」
「あ、送りますよマスター!」
鞄片手に立ち上がる新に、あげはも慌てて立ち上がる。
が、そんなあげはの言葉に、眉根を寄せる新。
女に送ってもらうとか、情けないような気がしないでも無い。
いや、間違いなく情けない。 ―― が、またあんな目にあったら堪らない。
「 ―― ……おう、頼む。」
「はい、任せて下さい!」
「僕も、冴島さん送ってくるよ。」
「 ―― ……宜しく。」
こうして、今日という日が終わろうとしていた。 |
|
| タイトル |
024・幾度となく続く連鎖 |
今日の気分 | 終 |
|
|
「『王』は本当は『王たる奇』って言うんですけど、うーん、どう言えばいいでしょう?」
考え込むように眉を顰めたあげは。恐らく僕も同じような表情をしていたに違いないと思う。
「……王の因子を持った『奇』の太陽。概念であり確かな存在。世界が生み出す世界の敵」
「なんだ、そりゃ?」
突然呟くようになった僕の言葉に、救世主である二人は首を傾げた。
意味が判らないのは重々承知している。しかし説明は出来ない。
「『王』そのものの詳細は『王』という存在自体が禁忌とされている為に上手く伝えることが出来ない。救世主を守らなければならないのは、救世主が『王』を倒せる唯一の存在だから」
「二人がその救世主で、その証が瞳の奥の巴の紋です。とても、大事な人。『王』も『奇』もそれを分かっているから、救世主を目の敵にして。……救世主は他の『奇』を惹き付け易いんです」
それを防ぐのが、僕たち使徒の役目。
最後の時まで傍らにいて、救世主に降り掛かる全ての災厄を肩代わりする存在。
世界を守る為に世界によって目醒めさせられる、救世主。
誰もそんなことは望んでいないが、そういう理不尽の上に立つこの戦いは。
ずっと昔から続き、そして、誰の思惑にも拠らず、
それがまるで必然であるかのように、既に始まって終った。 |
|
| タイトル |
023・幾度となく続く連鎖 |
今日の気分 | 続 |
|
|
「僕たちの体内には『因子』というものがある。詳しくは分かっていないけど一部の生物の体内に生まれつき存在しているもの。僕にも蘇芳さんにも、君たちにもある」
不可視でありながら、しかしその存在を確かに認識されているもの。
それが因子。全ての元凶であり、全ての力の源。これを持って生まれたものを、ただ単に因子持ちと呼ぶ。
「因子は普段は全くその力も効果も示さない。因子が因子として働くのは、因子を発現したとき」
「感情が昂ると発現し易いらしいです。マスターもそうだったでしょう」
「因子を発現すると、大概は君たちも見た『奇』という人を喰う存在になる」
「あの犬か……そっちは?」
「猫」
短く答えると、ふぅんと呟きながら新は腕を組んだ。
「ちょっと待て、因子を発現すると、ああいう怪物になっちまうんだろ?」
「そう。だけど僕らと、そして君たちの因子は少し違う。僕らのは君が見た犬のものに近い」
使徒の因子は特別なものではない。ただ昔から連綿と受け継がれているだけ。
因子を発現しても自我を保つ訓練なしには、他の『奇』と同じ道を辿ることになる者が多い。
ただ僕も含めて何に対しても例外はあるため一概にそうだとは言い切れないのだけど。
「因子には悪い面だけじゃなくて、私たち使徒や救世主にも戦う力も与えてくれます」
他の因子と違い、救世主の因子は特別であり、別格だった。
特に何の要素がなくとも、人を喰ってしまう『奇』に堕ちることはない。
「そして三宮さんと冴島さん、二人の因子は特別で稀少。だから僕らが守ることになっている」
「それが私たち、使徒です。使徒の役割は救世主にお仕えして、『奇』の『王』を倒すこと」
「『王』って……?」
その言葉に不穏な響きを感じたのか、湯のみを両手で抱えるようにしていたほのかが声を漏らした。 |
|
| タイトル |
022・幾度となく続く連鎖 |
今日の気分 | 続 |
|
|
昇降口から出て来たあげはに軽く手を上げ、そして横に並ぶ背の高い、昼間会った先輩…新に会釈した。
あげはと新は何故か手を繋いでいる。既に仲が良いみたいで、それはそれでと微笑ましく思った。
「飛鳥くん……! 無事でしたか、良かった」
「そっちもね……報告をお願い出来るかな、蘇芳さん」
「はい! 巴紋を確認しました。そちらもやはり?」
それに頷いて答えると、訳が分からないという顔をしている新を見た。
どこか疲れているようにも見えるが、話を聞きたいのは確からしい。
「鳳飛鳥です。蘇芳さんと同じ、使徒……、彼女の、だけど」
急に振られても表情を動かさずに、微かに会釈しただけのほのかに視線を遣った。
だいぶ落ち着いてくれたらしいが、まだ心配なのも確かだった。此処で一人にすることは出来ない。
「話は僕から。少し長くなるんだけど、僕の家で構わない?」
黙って頷いてくれた三人に微笑むと、背を向け、先頭に立って歩き出した。
周囲の気配は落ち着いている。取りあえず今は襲われる心配は無さそうだと判断する。
特に会話もなく、十分程度で辿り着くと、鍵を開けて中へと誘った。
社交辞令というわけでもなく、事実なにもないけど、と告げながら。
四人居れば手狭に感じるリビングは、安っぽいソファの前に、ただの机ではなく炬燵が置いてある。
ソファと炬燵だけが此処に来るときに、新しく買ったものだが、部屋に意外に馴染んでいる。
他に物と呼べる物が無いのが、その原因かもしれないが。
その炬燵の上に三つ、お茶を入れたばかりの湯のみを並べる。
「なんというか……シンプルな部屋だな」
「ラジオはあるよ。電池抜いてあるけど」
部屋二つに台所と洗面所というありきたりな間取りのこの部屋は、
僕にとってすれば『寝るところ』以上の意味を持っていなかった。
かと言って実家に愛着があるという訳ではないのも、確かだった。
居心地が良いのがどちらかと聞かれれば、僕はきっと此処だと答えるだろう。
どちらにせよ、居場所なんか必要ない。
ほのかに告げた答えが、一番正しい正解。僕たちとは、そういうものなのだから。
「さて、と」
一息吐くと、何処から話そうかと思いながら腰を下ろした。
皆の視線が集中するのをどこか他人事のように思う。 |
|
| タイトル |
021・幾度となく繰り返される連鎖 |
今日の気分 | 続 |
|
|
辛そうに座り込んでしまったほのかの肩を支えるように屈む。
聞こえているかは分からなかったけれど、出来るだけ近く、耳元で囁くように、定まった言葉を告げる。
「近くに居ながら御前に馳せ参じるのが遅れてしまったこと、申し訳ありませんでした。救世主、あれなる生き物は、奇であろうともそうでなくとも最早貴方に近付けさせない。鳳の名に誓って、約束致します」
猫とほのかに何の関係があるのかは分からなかったが、
触れて良いようなものではないのは言うまでもなく理解していた。
問題は彼女がそうである可能性に気付いていながら、それでも尚後手に回ってしまった僕の方にある。
報告はするだろうが、ある程度の処罰は覚悟しておかなくてはならないと思う。
だがそれは救世主に伝えることではないし、その必要も無い。
「……立てる?」
どれくらい経っただろうか踞っていたほのかは、壁に手をつき、ふらつきながらも立ち上がった。
飛鳥は彼女が倒れてしまわないように留意しながら、落ちた鞄を拾い上げた。
そこで漸く、ほのかの警戒心を孕んだ視線が飛鳥に合う。
「あの……?」
「話があるんだ。聞くか聞かないかは君の意志に拠るけど」
まだ顔色が悪いほのかの言葉を遮ると、視線を合わせずにやや一方的に言い放った。
取りあえず離れた方が良いだろうと、猫の居た場所を隠すに昇降口へと連れて行く。
目が合ったのは、校門についたときだった。
左手で右手を抱くようにしているほのかと僅かに距離を置いて立ち止まった。
「どこに連れて行くの……それに、救世主って、」
「行く場所は何処でも構わない。君がいる場所が僕のいる場所だから。それに関わる話がしたいんだ」
そう言いながら、視線を屋上に向けた。ほのかも釣られるように上を見上げる。
目に見えるほど強く、そして不自然な風の流れは、多分『救世主』の力。
抱き合っていたらしい二つの人影、片方はあげはだろうが、屋上の扉に消え、
気配だけになるのを視て取りながら、擡げかけた疑問を、今考えるべきではないと抑え込んだ。 |
|
|
その後、新くんが少し落ち着いた様子だったから、
本当は先ほどから少し気になっていた事を、ぽつりと漏らした。
「―すみませんでした、マスター…。危うくマスターが、怪我を。」
「今度は何だよ、蘇芳。つーか俺の方こそ巻き込んじまったというか、」
「……ち、違うんです!知ってて私、ここに来ました。」
「は?どういう、事だ?」
新が申し訳なさそうな表情をするものだからつい、いつもより
大きな声で遮ってしまった。
そんな私の様子に多少は驚いたのだろうか、眼を見開いて私に問うた。
「きっと私が言うより、飛鳥くんに聞いた方がいいかもです。」
「飛鳥…くん?って今日はよく聞く名前だな。」
「彼"ら"もいるはずですから、行きましょうか。そこで全てお話すると思います。」
――全ての説明が終わった後、もう一度ちゃんと謝らせてほしいです、マスター。
ふうん、と当たり前の事だがやや納得できなさそうな新の指を握って
屋上の出口、兼入り口の方へ軽く引っ張った。 |
|
|
―私を包んでくれた優しい腕を、何があったとしても
私が守るって事、今決めちゃいました。
「初めまして、マスター。私、貴方の使徒なんです。」
なるべく恐怖感を持たせないように、ふわりと微笑んだ。
ほんの一筋だけ流れた涙を、常に一定の冷たさが保たれた指で拭いながら。
その涙と共に、暴走しかけた新の力もゆっくりと収まったらしく、
それを新の肩越しに確認しながらほ、と息を漏らした。
先ほどから何度か私が"マスター"と呼んでいる事に対しても、
ようやく思考が回ってきたらしくて、少しだけ訝しげな表情を見た。
「…マスター?って何だよ。」
「ああ!あんまり気にしないで下さい、しきたりってやつです。」
「……?」
先ほどの衝撃の余韻と、自分が今置かれている状況がよく分からない
ままらしい新にどう説明したらうまく驚き無しに伝えられるだろう。
そんな事を考えている間に、私が今置かれている状況にも気付いてしまって
私にとってはほんの少し(周囲にとっては違うかもしれない)、赤面した。
カーッと全身の血流が頭に昇るこの感じ、ついさっきも感じたような気がする。
「あ、ああああのマスター。」
「ん?何、すお…ってあっはは!すっげぇ顔、してんぜ?」
「…へっ!?」
その突然の笑い声にあんまりびっくりしたものだから
思わず間抜けな声が出てしまった。
その私の反応に更に笑い声も増していた。
その時にようやく、私が赤面する原因となった私を包む腕を私から離した。
急に訪れた開放感に少しだけ、ほんの少しだけ"寂しい"っていう感情が
入り混じったかもしれない、という事は私だけの秘密だ。 |
|
|
「・・・、」
カバンを抱き締めるほのかの手は、震えていた。
声をかけられたことで漸く、視線は血溜まりから目の前の彼へと変わった。
しかし、ほのかの混乱は収まらない。
何がどうなっているのかということは勿論、猫という存在そのものに恐怖していた。
「・・・大丈夫?冴島さん」
ほのかの様子に怪訝そうな顔をすると、飛鳥は僅かに目を細めながら言った。
これが単に先ほどの恐怖だけのようには思えなかったからだろう。
しかしほのかは答えることも出来ず、そろそろと視線を彷徨わせる。
「冴島さん、」
「・・・っ」
そして不意に、掴まれた腕をほのかは力一杯振り解いた。
そこで漸く、怯えのある瞳が飛鳥へと向けられる。
「・・・何で、」
声はどこまでも掠れ、震えていた。
ほのかはそれだけ言うと、壁に手をつき、その場から離れようとする。
が、ぎこちなくとしか足は動いてくれない。
「猫、・・・は、嫌」
「・・・ちょ、・・・冴島さん!」
「離してっ」
掴まれた腕を振り払い、ほのかは荒い呼吸を繰り返す。
此処に居てはだめだ、と。
頭のどこかでそう声が聞こえる。
猫はだめだ。
近くにいては、――――。
「何なの・・・っあたしは此処にいるのが嫌なの!離してよっじゃなきゃ、」
逃げなければならない。
猫から、でなければ―――殺されてしまう、あの、――ヒトたちのように。
「・・・っ」
頭に痛みが走る。
ほのかは抱き締めていたカバンを、その場に落とした。
そして痛みを訴え始める頭を押さえて、ずるずるとその場に、座り込む。
|
|
|
「 ―― ……?」
「あ、あああ新くん、えっと、その……!」
いつまで経っても襲ってこない痛みに、まさか一瞬で死んじまったのか、と恐る恐る目を開ける。
が、確かに新は屋上に立っていて、腕の中には何故か顔を真っ赤にしたあげはが居る。
「犬は……?」
「え? ―― ああいえ、もう気にしないで良いかと!そんな事より、マスターに庇ってもらうなんて、私……。」
「は?」
ソ、と左頬に右手を添えられ、柄にも無くビクッと体が震える。
新自身からは勿論見えないが、その瞳には、巴の紋章が浮かび上がっていた。
「やっと、見つけた……。」
「あ、あの、蘇芳……?」
何だか雰囲気が違う感じのするあげはに、思わず首を傾げる新。
が、フワリ、と髪を煽られ、後ろを振り返ると、その先には渦を巻く竜巻があった。
「ゲッ……。」
「わ、発動したままでした!止めて下さい!」
「は!?これは俺の所為だってのか?冗談!こんな……こんな、事……!」
ありえない、と言いたげに顔を歪める新。
それに反応するかのように、更に風が吹き荒れる。
「嘘、だろ……だって、ありえないだろ!普通に考えて!」
「大丈夫です、別に変な事じゃないです!だから、落ち着いて下さい……!」
ガバッと抱きつかれ、ギュウ、と抱きしめられる。
―― だって、ありえない。こんな竜巻紛いのもの、人間が作れるわけが……!
頭の中がゴチャゴチャになり、今、自分が何を考えているのかすら分からない。
思わず泣きそうになったのを、あげはを抱きしめ返す事で押し込める。
「!?」
「なぁ……大丈夫だよな、俺。可笑しくなったりしてないよな……!」
「 ―― はい、大丈夫ですよ。私が保障してあげます。」
ポン、と背中を叩かれる。
その手の暖かさに ―― 今度こそ、涙が一筋零れた。
「 ―― 初めまして、マスター。私、貴方の使徒なんです。」 |
|
|
何が起こった。新の頭の中には、その一文だけが浮かび上がる。
が、それは即座に打ち消され、勝手に体が動いた。
「わ……っ。」
「蘇芳!」
グイッとあげはの手を引っ張り、“ソレ”の攻撃を避ける。
即座に反転し、あげはを自身の後ろに隠しながら、犬と対峙する。
が、だからと言って何かが出来るわけではない。
ただ、女の子に庇ってもらうなんて、そんな格好悪い事 ―― 違う。
俺は、目の前で誰かが傷付く所なんて、見たくないだけなんだ。
そう思うと同時に、再び風が吹き荒れる。
が、その突風を前にしても犬は怯んだ様子は無く、再度此方へと向かってくる。
何だか知らないけど、フェンスをへし曲げるぐらいだ、食らったらタダじゃ済まない……!
それでも、偶然屋上に来たばっかりに、あげはを巻き込むわけにはいかない。
が、距離が無い今、避ける事は出来ない ―― ……!
大怪我を負う事覚悟で、犬に背を向け、あげはを抱え込む新。
突然の事にあげはが戸惑ったのが空気で伝わったが、こうするしか護る方法は無い。
風が、大きくなった気がした |
|
|