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わたくしは人が動く気配を感じて目を覚ましました。
ここはどこでしょう……ああ、屋敷の庭先。ご主人様の大事にしている深緑の庭園がガラス越しに見えます。
わたくしとしたことがどうにも迂闊でした。
どうやら天気が良いものだから、お仕事の合間に転寝をしてしまったようです。愛用のデッキブラシは地面に横たわっていました。
長い夢を見ていたような気がする。
気のせいかしら。
窓の外には誰もいません。
庭は緑で満ちていて、庭師が世話をしているから此処はご主人様が死んだ後もそのまま残るでしょう。
……そんなことは今どうでもいいですね。
肝心なのはわたくしを起こした不埒者、あれはきっとお客様です。
だってあんな形の者はこの屋敷におりませんもの。
廊下にはエイルがせこせこと歩いていたので、私は彼女を捕まえて問います。
「お客様はもうお帰りになられたのですか」
「え? お客様なんて今日はまだ1人も見えてませんよ?」
それはおかしい。
わたくしは人の気配を感じると自然に起きてしまいます。ですから、さっきまで彼の人はそこにいたということですわ。
「もしかしてこのお屋敷で迷っちゃったんですかねー。私なんて未だに道迷うことあるんですよ。お屋敷は広いですから、私、捜してみましょうか?」
心強くはないですけど都合は良いですね。
わたくしはエイルにお客様の捜索を任せることにしました。尤も、この屋敷の中で異人が事を起こそうものなら、どこにいた所で必ずわたくしが勘付きます。ですから、彼の人はもう丘を下りられたかもしれませんが。
そうお願いをすると彼女は「名探偵エイルにお任せっス!」と気前のいい返事をするので、メイタンテイはともかく、わたくしはエイルにお客様の特徴を伝えることにしました。
「きちんと正装をした男性でした」
「ふむふむ、いいとこの貴族さんでしょうか。他に特徴は?」
「生首を持っていらっしゃいましたよ。長く綺麗な髪のをした」
「ふむふむ、生首を……なまくび?」
「ええ、男の生首を」
わたくしが言い終えないうちにエイルは、なにやら不穏当な悲鳴と共に駆けて行ってしまいました。
全く、何のつもりなのか。
ご主人様にでも訊いてみましょうか。
追記:
結局あのお客様は現れず、ご主人様もご存じない方だったようです。
あれはわたくしの夢だったのでしょうか? |
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| タイトル |
ちょっとまってて |
今日の気分 | お久しぶりでございます |
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「随分愉快な事になっていますがご主人様、この状況を簡潔に説明して頂けますか」
「……バレンタインに貰ったチョコレートですねえ」
「ええ」
「屋敷のお嬢さん方から1つずつ頂きまして。あ、そういえばアースラからはまだでしたねえ」
「わたくしはその様な行事ごと、興味の欠片もありませんので。先をどうぞ」
「ええ、それであまりに可愛らしく包んで下さっていて、これを食べるのは勿体無いなあと」
「隠しておいた訳ですか」
「ベッドの下にと考えたのですが、食べ物をそのような場所に置くのもどうかと思いまして」
「成程それでキッチンの空き棚に」
「とけちゃったみたいですねえ」
「見事な溶け様ですわ。匂いどころか液体が染み出ています」
「のんびりダベってねェでテメエらも掃除手伝え掃除!」
追記:
「たかがコックの分際で雇い主に命令とは何です。身分を弁えなさいその豚以下の身分を」
「テメエはメイドだろーが! 休みはここまでにして、いい加減雑巾持て。始めろ! 働け!」
お待たせしました。
……アースラ再始動!(`・ω・´)
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…私はサリンジャー先生のこの瞬間がとてつもなく怖い。
ごにょごにょと言い淀んでいる私を暫く黙って見守って下さった彼女ですが、
突然バシンと帳板で盛大にベッドをお叩きになりました!
びくつく私とエイルを尻目に、相変わらず女神のような微笑を湛えた儘に先生は
地獄から湧き出て夜を這うような低い声で
「貴方は病人です。ご自重なさい」
と仰られました。
さもすれば忘れてしまうのですが、そういえばサリンジャー先生はれっきとした男性。
そんな低い声で凄みを効かされれば涙目にもなるというものです。
言葉も無く私が何度か頷くとその表情は明るく人懐こい笑顔に注し代わり、
解ればいいのよぉーと頬を撫でて下さいました。
正直な話をしてしまえば、あのまま殺されるかと思いました。
あの絹のような真っ白な指がふうっと伸びてきて縊られてしまうかと。
考えすぎではないのです。そういった雰囲気が彼女にはあttt
(以下は眠ってしまったのか、続きが書かれていない)
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美しい青毛のサリンジャー先生は眼鏡を上げ直すと、
「調子はどう?」と煙草を咥えた儘器用にお尋ねになられました。
とても良いです、答えを返そうと口を開くとエイルが俊敏な動きで彼女から煙草を引っ手繰り、
しかしお医者様は慣れた手つきで新しい煙草を咥え直しました。
「サリー先生禁煙です!何度言ったら解るんですか!!」
「あらぁ、いいじゃない減るもんでも無いし」
「減るじゃないですか色んなものが!」
「例えばクロウリーの命とか?」
「ご主人様はクロウリーじゃないし縁起でもないこと言うなあああ!!!」
ケラケラ笑って「冗談よぉ」と頭を撫でられ爆発寸前のエイル。
煙草の火を消毒綿で消しダストシュートに捨てると、全くきちんとしてくださいよと呟いて
ベッド脇の椅子にサリンジャー先生を座らせ、自身も帳簿を持って隣に座りました。
いつ見ても飽きないお二人です。やっぱり先生も此処に居て下されば良いのに。
「さて、じゃあさっさと診ちゃおうかしらね。エリー」
顎で促されるままにエイルはハイと短い返事を返して帳簿を捲りサリンジャー先生に手渡すと
私の方へいつものように水銀計で体温を測りにいらしました。
シャツのボタンを外す時に、彼女が毎回毎回少し恥ずかしそうにするので
私もつい毎回毎回恥ずかしくなってしまい俯いてしまいます。
ふと、落ちた視線に自分の身体が映り込み、肋の浮いた胸部が露わになることで
自身が実に病人臭い瘴気を放っていることを自覚し恥ずかしさが増幅した。
けれど、もし私が病気に罹っていなければ。
私はエイルやサリンジャー先生、ましてやこの屋敷の者全てと出会えなかったと思う。
その事について私はこの謎の病気に感謝しなくてはならないのかもしれない。
ぼうっとそんなおかしな事を考えていると、素早く水銀計を腕間に挟み、
エイルはさーっとボタンを留めて元の位置へ帰ってしまいました。
何か一声掛けた方が良かったかしら、ふと顔を上げると帳簿を確認し終わった先生と
うっかり目が合ってしまいました。やってしまった。
彼女は壮絶なほど美しく微笑んで「ちょっと訊ねるけれど、
24日の体温が異常ねぇ。何かしたかしら」と優しい声でお尋ねになりました。
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「それは絵描きが腕の未熟ゆえ。貴方は御主人様の何も解っていませんもの」
アースラが紅茶を飲み終えたようで素描を一瞥するとそんな言葉を。
何を言うのかと叱ろうとするとそれよりも早くノーマンがアースラの言葉に
同意を示し、呆れたような口調で続けます。
「貴方は此処においでになられて暫く経ちますが、御主人様のお歳をご存知ですか?」
は?と少し怒ったような顔で聞き返すロベルト様は「見た感じ俺と同じくらいじゃねーの」と
乱暴にクロッキー帳を閉じ紐を結んで両人を見回しました。
あら、私そんなに若く見えるでしょうか…。ちょっと嬉しかったです。
ですがそんな私にお構い無しにアースラとノーマンは顔を見合わせると、
くすくすと意味深に笑い出しました。こういう時だけ気概が合うのですから困りものです。
流石にロベルト様もこれにはムッときたようで、少々眉間を険しくして何なんだよと
膨れてソファーに足を組んで頬杖を突き二人を睨めると、ノーマンが万年筆の蓋を閉め
「お馬鹿さん。クローズマン様は29歳ですよ。最も今年の暮れには30になりますがね」
そう言ってニヤリと笑われました。ああ、そんな事は言わなくてもよいのに!
私はあんまりにも恥ずかしくなって、話もそこそこにサロンを逃げるように出て行きました。
後から「嘘だろー!?おい、クローズマン待てよー!!」と聞こえましたが、
こんなおじさんがその場に留まるのはどうしても居た堪れなかったのです。許して下さい。
サロンから自室へ逃げ帰る途中、お医者様を連れたエイルに見つかってしまいました。
走っちゃ駄目ですよぉ、エイルはすぐさま私に駆け寄ってくれ、
情けなくも彼女に寄りかかるような形で自室まで帰る羽目となってしまいました。
着替えを済ませてベッドへ入ると、改めてお医者様がいらっしゃいます。
彼女の名はサリンジャー=J。エイルは「サリー先生」と呼んでいます。
黒いロングワンピースに白衣を召したおおよそ医師には見えない格好をしておられますが、
なんでも聞いた所によるととても腕の立つお医者様なんだとか。
ただし「モグリ」ゆえきちんとした病院には勤められない、とか…モグリとは一体何なのでしょう。
ずっとずっと気長に私の所へ来て下さる方だから、モグリだろうがなんだろうが
そんなことは一切関係の無い話なのですけれど。
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暫し館内をうろついてから、休憩を取ろうとサロンへ足を向けました。
サロンは皆の休憩室になっているので、どなたかに会えるかと期待していると
やはり数人の人影が確認できました。
ソファーに足を投げ出して真剣にスケッチをしておられるロベルト様と、
優雅に読書を嗜みながら紅茶を飲んでいるアースラ、
それから顰めっ面で書類整理や帳簿つけをしているノーマンの三人が
各人全く違う方向を向いて自由に寛いでおられました。
私が顔を出すとそれに気付いたのかノーマンが簡易な挨拶を返し、
それに釣られる様にロベルト様も「おいっすー」とクロッキー帳から目を離さずに
挨拶を下さりました。即座にノーマンに窘められ不機嫌そうに
口唇を尖らせるロベルト様はなんだか小さな子供のようで大変愛らしく、
私が向かいに座ると「こいつ酷くねー!?」と怒り顔。
微笑ましく思い笑いを漏らすと「酷いのは貴方の頭ですわ」とアースラが口を挟み
そこから三つ巴の口論になってしまわれました。
狼狽えた私が行く末に顔を青くしている間にその諍いは消沈しましたが、
あのまま掴み合いなどにならなくて本当に良かったと思います。
どなたが勝つかという問題ではなく、誰か一人でもお怪我をなさったら大変です。
パタンとクロッキー帳を畳む音に顔を上げると、ロベルト様が丁度頁を更新した所で
木炭芯の入った鉛筆を軽く紙の上に滑らせながら私にお話しかけ下さいました。
「クロはさぁ、ちょっと描き辛いよなぁ。難しいよ」
「そうでしょうか?」
「うん。変な感じだ。見たまんま描くとなんか違うんだよな。ガキっぽすぎるっていうか。
もうちょっとこう、雰囲気を掴めれば違うんかな」
などと仰りつつ私に幾ばくか目を配せつつ筆を走らせ、少しすると「ほら」と言い
帳を翻しその内容を見せて下さいました。
そこには簡素ではありますが的確に特徴を捉えられた私の胸像画があり、
私は思わず感激のあまりひゅうっと息を飲んでしまいました。
「やっぱりなんかが違うんだよ。わかんねえー」
それでもロベルト様はご自分の作品がお気に召さない様子で、頭を掻いて
絵と私を何度も見比べておられました。
私としてはとても素敵にお描き頂けて嬉しいやら恥ずかしいやらで、
ロベルト様の仰られる違和感のようなものは微塵も感ずる事はありませんでしたが…。
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1/30 クローズマンの日記
天候:宛ら良好だが午後より雪 体調極めて良し
いつも同じように書いている日記だけれど、
新しい試みとして今日の記事は口語体で書いてみようと思う。
面白かったらもう暫く続けよう。
◇
一月も後半に差し掛かりスペイン定義、ロシア定義のクリスマスも終わったこの頃。
世間はきっとようやっと落ち着きを取り戻し安定した生活へ戻ってゆくのでしょう。
…しかしこの時期になると私は街へ降りる事を禁止されているので、
今世の中が一体如何いった動きを見せているのかは想像でしかないのですが。
さて私の塒である我が屋敷では、クリスマス、新しい年の始まりに続き
切れ目無くとある催し物が設定されています。
それはバレンタインという相互感謝の日であり、一月の終りになると
来る2/14に向けて各々が普段お世話になっている人々に
心を籠めた贈り物を選んだり、作ったりする期間に突入します。
今年も例外ではなかったようで、朝起きると皆が相変わらず忙しく動き回っていました。
軽い朝食を済ませ、幸い体調が良かった為杖を突き屋敷内を歩いていると
両手に色とりどりのリボンや布を抱えたエイルに出会いました。
彼女は私に気付くと深く会釈し、「今年もいいもの作っちゃいますよ!
期待していて下さいね!」と笑顔で二階へと走り去ってゆきました。
はてエイルは何を下さるのでしょうか。
去年はケーキを焼いて下さいましたし、その前はバッグを拵えて下さった筈。
あの材料を見ると、今年は服飾系の物を作って下さるのではないでしょうか?
彼女はとてもセンスが宜しいから、今からとても楽しみです。
そう言えば、この屋敷には他にアースラ以外の女性給仕人が三人と、
ノーマン以外の使用人を二人、コックを一人住まわせているのですが
その誰もがバレンタインをどこか待ち遠しく思っているようです。
私が此処へ引き止めてしまったお客様(カルヴァ様やロベルト様の事です)も、
そろそろこの催事にお慣れになられたでしょうか。
お伺いするのを忘れてしまったので、明日是非伺おうと思います。
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袋の中身は可愛らしい包み紙の飴玉でした。なるほど、おとしだまって玉になってるものを贈るんでしょうか。
「ありがとうございます、ご主人様!」
「ありがとークローズマン」
「何騒いでるんだ」
私とロベルトさんが喜んでいると、ちょうどカルヴァさんが通り掛りました。
猫さんはいつものように肩の上です。ふっさふさです。
さ、触りたい・・・!
「クローズマンがおとしだまくれたんだよー」
「あ、今カルヴァ様の分もお持ちしますね」
「いや、オレはいい・・・・・・っておい、触るな!!毛並みが乱れる!」
猫さんを触ろうとこっそり手を伸ばしていたら、カルヴァさんに俊敏に除けられてしまいました。
ちぇー。
「いいじゃないですか触らせてくれてもー。あ、そうだ、カルヴァさんには私からおとしだまあげます」
そうそう、玉ならカルヴァさんにぴったりのものがあったんでした。
私はダッシュで自室へと駆け込み、その玉を持って戻りました。
「じゃーん!はい、おとしだまですっ」
カルヴァさんへのおとしだまは赤い毛糸玉です。
本当は編み物でもしようかと思ったんですが、糸がこんがらがって私の頭もこんがらがったので挫折しました・・・。
「い、いらねぇよ毛糸玉なんかっ・・・!」
「えー、ほら、猫さんにぴったりのおもちゃだと思いますよ?」
私が毛糸玉を持った手を動かすと、猫さんの視線も一緒に移動します。
・・・か、かわいい・・・!
「そーれ」
「にゃ・・・にゃぁぁぁぁ!」
ぽーん、と廊下に向かっておとしだまを投げると、猫さんは耐えかねたようにそれを追っていきました。
何故かカルヴァさんも一緒に。
「すごいダッシュだな」
「大喜びですね」
「喜んでもらえて良かったですー」
ロベルトさんとご主人様、私は並んで微笑ましくカルヴァさんを見送りました。
今年もいい年になりますよーに。
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今日は楽しいお正月というものらしいです。
庭師の親方さん曰わく、親方の国では1日から3日間くらいはおめでたい日なんだとか。
何もなくとも私はご主人様の元で働けるだけで幸せなのですが、さらにおめでたい日というのは良いですね!
「エイルー、これやらねー?」
ロベルトさんのお誘いで不思議なゲームをする事になりました。
二人向かい合い、四角い板で羽の付いたボールを打ち合うんです。羽を落とした方が罰を受けるという、なかなかに厳しいゲームなのです。
「あっはっは、エイルは弱いなー」
私の顔に罰として黒い絵の具でぐりぐりと何か描きながら、ロベルトさんは高らかに笑っています……ま、負けない!
「エイル☆アタァァック!」
私が力強く打った羽付きボールは綺麗な孤を描き……窓を破って旅立っていきました。
「…うぅ、痛い…」
「…今度は外でやろうな…」
駆けつけたノーマンさんにこっぴどく叱られ、おまけに頭をぐりぐりされてさすがの私とロベルトさんも反省です。
じんじんする頭を抱えながら私とロベルトさんが屋敷の隅っこにうずくまっていると、車椅子に乗ったご主人様がいらっしゃいました。
「どうかなさったんですか二人とも…?」
「あ、ご主人様ごめんなさい…窓ガラス割っちゃいました」
「えっ、大丈夫ですか、怪我はありませんか?」
うぅ、と申し訳なくご主人様に謝ると、ご主人様は真っ先に私達の身の心配をして下さいました。
なんてお優しい…!やっぱり私はご主人様の元で働けるだけで幸せ者です。
「二人が無事なら窓ガラスくらい何てことないですよーほら、元気を出して下さい。…あ、そうだ二人に『おとしだま』をあげましょう」
「おとしだま?何だそれ?」
ロベルトさんと私が首をかしげるとご主人様が『おとしだま』の説明をしてくれました。
庭師の親方の国では、『おしょうがつ』に年長者が下の者達に『おとしだま』を渡すそうです。ちなみに見習いのアッシェも毎年親方から頂いてるんだとか。
「でも、『おとしだま』は何を差し上げればいいものなのか分からなかったので…これを用意しました」
そう言ってご主人様は何かが入っている小さな袋をくれました。
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| タイトル |
よろしくお願いします! |
今日の気分 | おわり |
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「あけましておめでとう。アースラ」
いつものようにご主人様のお部屋へと朝食をお持ちします。
「今年もよろしくお願いしますね」
何をよろしくすれば良いのでしょう。
「今年も変わらず私のお世話を宜しくという意味でしょうか?」
此方に訊かないで下さい。
そんなこと今更、確認するまでもない。
わたくしは貴方の体朽ちるそのときまで、貴方の御傍におりますとこの血に誓ったのです。
しかし確認せずには安心できないのが人間だとでも申しましょうか。わたくしは未だ人間が理解できない。
わたくしは、今日は珍しいメニューですねと『おせち』をフォークでつついているご主人様を見遣ります。
「私は信じていますよ?」
ご主人様はわたくしの心を見透かしたように取り繕いました。
「ではご主人様、今年もよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
追記:
ご主人様が喉に餅を詰まらせました(お約束です)
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