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──……?
……ああ、眠ってしまったのか。
それも致し方ない。今は夜だ。人間は眠りにつく時間だ。最近は夜の民を気取って夜更かしをする人間もいるようだが、きみは、大きくなっても、一日をひとりじめしようなんて考えを起こすものではないよ。人間には人間の与えられた領分があるのだから。
そう、君たちのために昼があるように──今この夜は、君たちとは違う“ひとびと”のためにある。
きみは知らないだろうね。いつもきみの枕元にいるけむくじゃらのテオドア殿が、きみの気にしているそばかすが消えますようにと毎晩お祈りをしていることを。
……きみは、次に私が語り始めるときに、この物語のことを覚えているだろうか。
明日のきみは、あの魔物の卵たちのことがはっきりとは思い出せないかもしれない。そして、ひとりの──きみによく似た、そしてどこにでもいるような──人間の女の子のことも。
そうだ、きっときみは彼らのことを思い出せないだろう。おぼろげに、影のように、切れ端が掴み取れるだけだ。さっきまでははっきり覚えていたはずなのに、目が覚めてしまった瞬間に薄れる夢のように。
早い時間に語れればいいのだが、どうか許してほしい。『夜に棲まう一族』の物語は夜にしか語られることを許されていないんだ。
この物語は、途切れてしまった。
きみの記憶の中でもこの夜のあいだにすっかり薄れてしまうだろう。
そして私は、もう二度とこの続きを語らない。
──それで、いいんだ。
また、きみにはあらためて物語を語ろう。はじめからすっかり、今度は最後まで。きみはこの物語をとても聞きたがっていて、そしてこの物語もきみという大事な聞き手を必要としているんだ。
今夜私が話した──そして途切れてしまった物語にも、語られないだけで、もちろん終わりはある。…なに、よくあることさ。悲しいことではないよ。
それに、幸いにしてきみはまだ物事に終わりを必ずしも必要としていない年頃にある。今夜話した物語の結末は、きっと今きみがいる夢の中にあることだろう。この物語は、きみさえ気付かないきみの心のどこかにひっそりと仕舞われて──閉じられたんだ。しおりも挟まぬままにね。
それでは、おやすみ。
また、きみに物語を語りに来よう。
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