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| タイトル |
#395 |
今日の気分 | 2006年10月10日 |
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『それでは、本日あった全国ヴァイオリン大会地区予選の模様を、お伝えします。』
昨日の夕方、居間でボーっとしていた俺の耳に入ってきたその言葉。
なんとはなしにテレビに視線を向けると、大体中学生から大学生ぐらいまでに見える男女が映ってた。
ヴァイオリン大会っつっても、チェロとか、そういうのもあったけど。
そして、次の瞬間目に入ってきた映像に、俺は突いていた肘からガクッと崩れた。
「はぁ!?」
「ちょっと、何大声出してるの。」
「や、何でもない。」
地区予選を突破し、全国に進む人達の名前の中に ―― 見知った名前があったら、そりゃ驚くだろ。
ちょっと待て、あいつコンクールとかもう出ないって言ってなかったか?
っつーか、最近忙しかったのはこの所為か?
明日、絶対問い詰めてやる!と決心し、今、俺は学校へと向かってる。
「来栖はいるか!」
「登校第一声がそれかよ、ハリー。まだ来てないぞ。」
「チッ、マジかよ……。」
いつもは、俺より先に来てるくせに……ああ、俺が早く来すぎたのか?
ったく、早く来い!なんてちょっと理不尽かと思いつつ、俺は来栖が来るのを待った。
「おはよ、」
「来栖!」
「 ―― 朝から五月蝿いわよ。何。」
「お前、全国大会ってどういう事だよ!」
「 ―― ……え、何で知って、」
「テレビだよ、テレビ。昨日、ニュースでやってたぞ。」
珍しく、本気で驚いてるらしい来栖。
そんで俺の言葉に、手を顔に当てながら、ハー、と溜息を吐く。
「迂闊だった……そうか、そういやニュースで流れるんだったっけ……。」
「じゃ、じゃぁやっぱり、」
「そう。私、今年の冬の全国大会目指そうと思って。地区予選通ったから、年末まで忙しいの。」
分かった?と、まるで親が子どもに言い聞かせるみたいに言われる。
でも……何で、今更?あいつに会ったのが原因か?
「お前、コンクールとか出ないんじゃなかったのか。」
「ちょっと前まではね。 ―― しょうがないじゃない、またあの舞台に立ちたくなったんだもの。」
あの舞台。俺らが立つ舞台とは、違う舞台。
そう思うと、ちょっとムカついて ―― 悲しい、気がした。 |
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| タイトル |
#394 |
今日の気分 | 2006年10月9日 |
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全国ヴァイオリン大会、地区予選。こんな舞台に立つの、久しぶり。
我ながら、よく二週間で曲を仕上げたと思う。〆切も、あの日曜日だったし。
まぁ、それでも簡単な曲なら、数日で仕上げられたんだろうけど。
―― それじゃ、全国までいけない。でも、今まで弾いた一番レベルが高いと思える曲は、多分仕上げられない。
無難だと思われる曲を選択はしたけど……大丈夫かしら。
「ま、今更考えてもしょうがないか……。」
針谷には内緒だけど、千秋には話しとけば良かったかしら。
誰かに応援して貰いたいって思ったのは ―― 本当に、久しぶりだった。
「来栖さん!」
「え? ―― ああ、お久しぶりです。」
「久しぶりー!どうしたの、もしかして戻ってくるの?」
「いえ……まだ、ハッキリと決めたわけではありませんが。」
控え室で準備をしていると、見慣れた顔の人に話しかけられる。
日下部も戻って来いだとか五月蝿いけど ―― 今回、結果が残せれば……とは思ってる。
でも、私は大会から遠ざかっておよそ一年のブランクがある。
正直、最近の演奏者は知らないし、自分のレベルが下がってる感も否めない。
「この前ね、日下部くんに会って。来栖さんに会ったって言ってたから、もしかして、とは思ってたんだけど。」
「そうですか。やっぱり、貴女もあのコンサート出てたんですね。」
「五月蝿い方々ですね。静かにして下さいません?」
その声に振り向けば、見覚えのない人。
中学生ぐらいかな……?何処ぞの令嬢です、って雰囲気醸し出してくれちゃって。
「これは失礼しました。」
「本当ですわ。大人のくせに、そんな一般常識もありませんの?」
「すみません。 ―― まぁ、こんな場所にいるんです。これで決着つけましょう。」
ポン、とヴァイオリンケースを叩く。すると、その子はちょっとだけ顔を顰めた。
それでも、受けて立ちます、と強気な風で。
その子がどんな演奏をするのかは勿論知らないけれど、これで多少上に近付いた気がする。 |
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| タイトル |
#393 |
今日の気分 | 2006年10月2日 |
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昼休み、俺らは教室で飯を食ったわけだが、来栖は今図書室に行ってていねぇ。
てなわけで、俺は佐伯に探りを入れてみる事にした。
「なー佐伯、お前なら何で来栖が忙しいか、知ってんじゃねぇのか?」
「ああ、一応な。来週までバイトも休みだし。」
「そうなのか!?なぁ、教えろよー。」
「綾本人に聞けよ。」
聞いても教えてくれねぇから、お前に聞いてるんだろうが。
あー畜生、にしてもやっぱり佐伯は知ってんのか。流石幼馴染。
「志波、お前は気にならねぇ?」
「ならない。」
「即答かよ……あー、何か気にしすぎてイライラしてきた。」
「お、落ち着いてハリーくん。それじゃただの八つ当たりだよ。」
「隠し事の一つや二つでイライラされてちゃ、堪らないわ。」
「あ、お帰り綾乃ちゃん。」
「ただいま。」
図書室に行ってた来栖が帰ってくる。手の中には、さっきまで読んでたのと違う本。
こいつ、卒業するまでに図書室の本、全部読む気じゃないだろうな。
「じゃぁ教えろよー。何で忙しいんだよ、お前。」
「あんまりしつこいと、殴るわよ。」
「何で殴られなきゃなんねぇんだよ!」
「まぁまぁ、ハリーくん。でも本当、最近綾乃ちゃん忙しそうだよね。大丈夫?無理してない?」
「大丈夫、体調管理も仕事の一環だから。」
心配ありがと、なんて言いながら、また千秋抱きしめてるし。
―― にしても、仕事って何だ。珊瑚礁……じゃ、ないんだろ。
高校生の仕事?勉強……な、わけない。こいつが、テスト前でもないのに態々勉強するわけがねぇ。
ってなると……何だ?千秋の誕生日……でもねぇよなぁ。
「だー、気になる!頼む、教えてくれ!」
「嫌よ。 ―― そうね、結果が出たら、教えてやらない事もないけど。」
「お、マジか?」
「ええ。ま、それまで大人しく待ってなさい。」
大人しく、って部分が妙に強調されてたけど。 ―― まぁ、気にしない事にする。
そういや、来週まで忙しい、って言ってたな。て事は、その何かが来週にあるわけだ。
「オッケー、待ってる。」
「『教えてやらない事もないけど』って言ったの。絶対教えるとは言ってないわ。」
「お、お前!言葉遊びかよ!」
「違うわよ、あんたの勘違いを訂正してあげたの。」
何にせよ、来週ってわけだ。それまでは、黙って待っててみるか。 |
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| タイトル |
#392 |
今日の気分 | 2006年10月2日 |
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何ともありえない席順になってしまった。……何で、毎度毎度針谷が傍にいるの?
なんて考えても、事後ではどうにもならない。
―― でもなぁ、最近練習で忙しくて、針谷に構ってやれてない。
そのうちキレられたらどうしよう……なんて、子どもじゃあるまいし、流石にないか。
そもそも、そんな事気にしてられない。来週の祝日、地区予選があるから。
此処で上位に入らないと、全国には行けないってわけだ。
こんな所で躓くわけにはいかないし……。
「おい、来栖!」
「え?何よ。」
「だから、今月千秋の誕生日なんだろ?何かすんのか?」
針谷の言葉に、ああ、と言葉を漏らす。
そうなのよね、今月の22日は千秋の誕生日。
瑛の時の言いだしっぺは千秋だったけど、瑛はやって千秋はやらない、ってわけにはいかない。
折角日曜日だし、ちょっと豪華に出来れば、なんて思ってはいるけど。
「私、来週まで忙しいから、考えるのはそれ以降ね。」
「ああ?ンでだよ。」
「針谷には関係ないから。 ―― 文化祭もあるし、今月は忙しそうね……。」
私は帰宅部だから、クラス出展に参加する事になるけど。
一体何をするのかしら……面倒臭くない事だと良いけど。
定番だと、喫茶店とかお化け屋敷とかかしら。 ―― 前者の方が、準備は楽そうよね。
「なー、来栖。」
「何。」
「お前、何で最近忙しいんだよ。ライブの前より忙しそうだぞ?」
「そりゃね。来週まで忙しいって言ったけど、多分年末まで忙しいから。」
「はぁ!?」
大声を上げて、ガタン、と立ち上がる針谷。静寂が広がる教室、集まってくる視線。
―― 今が授業中って認識してたから、小さい声で話しかけてきたんじゃないの?
「針谷、どうした。」
「や、何でもないです……。」
今の針谷に擬音をつけるなら、しゅん、だろう。
針谷の言動に笑い声が響き、ほんの数分、授業は中断された。 |
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| タイトル |
#391 |
今日の気分 | 2006年10月2日 |
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志波くんが針谷くんを小突いて何か言ったけど、何を言ったかまでは聞こえず。
結局何の話か分からないまま、チャイムが鳴って席に座ることとなった。
若王子先生が教室に入ってくると、先生は何やら楽しそうに、
「今日のHRは席替えをしまーす」
と言った。
席替え、かぁ……。
これまで何度か席替えはあったけど、何だかんだで、わたしと綾乃ちゃん、ハリーくん、志波くん、佐伯くん、このお決まりのメンバーは割りといつも近くだった。
今もわたしの前は綾乃ちゃんで、その隣は佐伯くん。そして、その隣はハリーくん。
志波くんはわたしの後ろの席と、全員密集している。
だから今回も………。
……と、思っていたのに。
「や、佐倉さん。一番前ですね」
一番前のど真ん中……。
先生に微笑まれるも、ちょっぴり寂しい……。
その理由は、綾乃ちゃんを初め、みんな後ろの席で密集しているから。
わたしだけ取り残されたように一番前……。
「はっはっはっは! 残念だったなー、千秋!」
「ううっ…。みんな、わたしのこと忘れないでねー」
よしよしと頭を撫でてくれる綾乃ちゃんに対し、佐伯くんは冷めたような目で「大袈裟」と呟く。
「瑛が前の席っていうのは良しとして、何で針谷が隣なのかしら。私のくじ運も悪くなったかな…」
「おい、それどういう意味だ!」
そっか…。
綾乃ちゃんとハリーくん、隣同士になったんだ。
「志波くんは…」
「オレは針谷の後ろ。一番後ろの窓際」
「わあ、いい席だね」
「けど、針谷のせいでゆっくり眠れなさそうだな…」
でも何だかんだで、わたし以外みんな席近い。
本当に孤島に取り残された気分。
「では、皆さーん。席を移動させましょう」
若王子先生の合図で、みんな席を移動させる。
名残惜しかったけど、こればっかりは仕方ない。
「頑張って、千秋」
「うう、綾乃ちゃーん」
「はやく移動しろって!」
うー!
ハリーくんの鬼ー!
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| タイトル |
#390 |
今日の気分 | 2006年10月2日 |
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「来栖には言ったのか?」
「いや、まだ。何かあいつ、最近忙しそうなんだよなー」
「店がか?」
「まー、それもあるだろうけど。……いつも以上に構ってくれねぇ」
……構ってくれないって。
子供か、針谷。
「来栖のことだから、佐倉のためなら時間作ってくれるんじゃないのか?」
「そう、それなんだよ!」
突然声を強くする針谷に、眉を寄せる。
何突然熱くなってんだ……。
「何つーかさ…来栖って、マジ千秋のこと好きなのかな?」
「………は?」
真剣な顔で何を言うかと思えば……本当に何言ってんだ。
「スキンシップ過多っつーか、女同士でも普通あんなことやらねーだろ?」
…あんなこと。
それはつまり、来栖が無意味に佐倉を抱き締めたり、頭撫でたり、そういうことか?
「…ああ、」
「なっ、やらねーだろ? 普通はさ!」
「いや……。でも、分かる気がする」
「え…!?」
「何か小動物みたいだろ、佐倉って」
「あ? あー……まあ、そうか」
「だから、何となく分かる」
「…………いや。いやいやいや! 全然分かんねえって! てゆーか、オマエが分かんねぇ!」
針谷が大きな声を出したところで、教室に到着した。
入り口付近では、佐倉と来栖が話をしていて、針谷の大声に驚きながらも反応した。
「おはよー、志波くん、ハリーくん」
「朝からうるさいんだけど…」
「ねえねえ、何の話? 何が分からないの?」
小首を傾げて、佐倉が針谷を見上げる。
その仕草が小動物そのままで、オレは針谷を肘で小突いて「ほらな」と小さく呟いた。
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| タイトル |
#389 |
今日の気分 | 2006年10月2日 |
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針谷達のライブも終わり、月日はあっという間に過ぎ、もう10月。
厳しかった残暑も嘘のように風が涼しくなり、今日から制服も衣替えだ。
と言っても、夏服のサイズが合わず、持っていないオレには関係のないことだったが。
朝練のない週始め。
門が見えてくるあたりで、ここまで何度目か分からない欠伸をする。
「おう、志波ー」
声を掛けられた方に振り返ると、針谷が手を振って駆けて来た。
朝からテンション高いな、こいつは……。
「また眠そうだなー、オマエ」
「ああ、眠い…」
1限目は図書室直行するか…とか考える。
でもさすがにここ最近毎日だしな。教師にも目ェ付けられてるしな…。
針谷と並んで、(主に針谷が喋りながら)教室へ向かう。
「もう10月かー。はやいよなー」
「ああ、そうだな…」
……だめだ、眠すぎる。
針谷の言葉がどんどん遠のいていく気がする。
「あ、そういやさー」
「あ?」
「10月って千秋の誕生日なんだってな」
誕生日?
佐倉の?
「あれ? 志波、知らねーの?」
「…ああ、初めて聞いた」
「まあ、オレもこの間来栖に聞いたばっかりなんだけどよ。佐伯んときみたいに何かするんかなー」
そうか…。
一応、オレより年上なんだ、あいつ。
「何かするんだったら早めに決めておいたほうがいいよな。文化祭の準備とかもあるし」
文化祭か。
10月の終わり頃から準備期間に入るんだったか。
針谷はきっとライブの練習があるだろうし、確かに何かするんだったら早めに決めておいたほうがいいかもしれない。
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| タイトル |
#388 |
今日の気分 | 2006年9月24日 |
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「おー、来たか。どうだった、楽しかったか?」
「うん、凄い楽しかった!ハリーくん、格好良かったよ!」
「え?そ、そうか?じゃねぇよ、俺が格好良いのはいつもの事だろ!」
「はいはい、調子に乗らないの。来栖さん、良かったら紹介してくれる?」
「良いですよ。こっちが可愛い私の親友で、そっちのデカいのがこの子の彼氏。」
「あ、あああ綾乃ちゃん!?」
「く、来栖……!」
あえて名前は教えない。井上くんに教えたら、ロクな事にならない気がするから。
そしてサラリと吐いた私の嘘に、予想通りの反応が返ってくる。
でも、私の嘘に1番驚いてたのは、針谷だった。
「何だと!?おおおお前ら、いつの間にそんな関係に!?」
「ち、違う、違うからハリーくん!綾乃ちゃん、嘘吐かないで!」
「はいはい、御免御免。」
「何、嘘なの?凸凹カップルって感じで、面白いと思うけどね。」
もっと言ってくれ、井上くん。この手の話題は、彼に振るのが1番のようだ。
私の勘が外れてなかったら、志波も……だと思うんだけどね。
でも、今回だって、千秋が志波を誘った事になってるんだし。志波も動きなさいよ。
といった期待を込めて、話を振ってるわけで。
「よーっし、んじゃ着替えて打ち上げ行こうぜ。」
「あ、御免。私ちょっと用事、帰るわ。」
「な、何だと!?ちょっと待て、今日の成功はお前が居たからこそ、っつーか……。」
「ありがと。 ―― でも、御免。千秋、また明日ね。」
「え、あ、綾乃ちゃん!?」
千秋の制止の声も聞かず。 ―― 私は、とある場所を目指した。
「だから、本人に言って下さい。『来栖綾乃が来た』って。」
「 ―― 分かりました、少々お待ち下さい。」
私は今、某コンサート会場の楽屋側の入口にいる。
勿論私は関係者じゃないんだから、入れる筈もなく。
それでも ―― 奴、日下部を此処に呼び出す事くらいは出来る筈。
そして数分後、既に着替え終わってる日下部が慌ててやってきた。
「お、おまっ、どうした?」
「宣戦布告。」
「は?」
グイッと蝶ネクタイを引っ張って、顔を近付ける。
「 ―― 冬に会いましょう。」
そう、これは宣戦布告。日下部と ―― 自分と、針谷への。
負けない……絶対、この勝負には勝ってみせる。 |
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| タイトル |
#387 |
今日の気分 | 2006年9月24日 |
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俺達の持ち時間は15分。
で、俺らは来栖参加の曲を1番最後に回してて、今は舞台袖で待機中だ。
「緊張してる?」
「ば、馬鹿、誰が緊張なんてするか!」
「ま、あんた1人で舞台に立つわけじゃないんだし、そんなに気負わなくても良いんじゃないの。」
本当は緊張してっけど。既に上がりかけてるけど。
でも来栖の言葉に、そうか、って思う。別に、俺1人でステージに上がるわけじゃないんだ。
そう思うと、何とかなりそうな気がしてきた。
「よし、それじゃ行ってこい。」
「いてっ! ―― おう。」
前のバンドの演奏が終わり、会場が沸いてる。
やっぱり多少緊張はするけど、来栖に背中を叩かれ、井上達を見て。
―― ああ、俺はお前の一言で変われるんだ、って。そう、思った。
「どもー、ReD:Cro'Zです。」
いつもみたいに俺が名乗ると、一部のファンが悲鳴を上げてくれる。
前までは、この耳を劈くような悲鳴すら、聞く余裕がなかったんだよな、なんて。
「それじゃ、早速だけど一曲目 ―― 『 』。」
俺らの15分が、始まった。
「えーと、それじゃ次。今回はゲストを呼んでんだ、ちょっと期待してくれ。」
汗を手の甲で拭って、来栖の存在を告げる。
ゲストって誰?なんて言葉があちこちから聞こえてくるけど、来栖の存在を知ってるのが2人はいる。
生憎、何処にいるのかまでは見えねぇけど……志波が見えないんだ、きっと奥の方にいるんだろう。
舞台袖の方に顔を向けて、頷いてみせると来栖がステージへと出てくる。
それまではザワザワと五月蝿かった会場が、一瞬にしてシーン、となる。
「よし、それじゃ今日最後の曲。 ―― 『 』。」
「見たか!?観客の顔!サイッコー!」
「はいはい、お疲れ様。」
「でも、予想以上の反応だったよ。今日は有難う、来栖さん。」
「いえ。まぁ、久しぶりの舞台で楽しかったですよ。」
俺らの15分が終わった。結果としては、大成功、って言って良いと思う。
これまでにないくらい、気持ちよく歌えた。多分、他の奴らも。
それは勿論、来栖っていう新しい刺激があったからだと思う。
「綾乃ちゃん、ハリーくーん!」
「千秋、志波。」
楽屋の前に着いたら、聞きなれた声に大声で名前を呼ばれる。
そっちを向けば、予想通り、千秋が満面の笑みで走ってきてた。 |
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| タイトル |
#386 |
今日の気分 | 2006年9月24日 |
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「オーッス。」
「遅いよのしん。」
「文句なら、俺じゃなくて来栖に言え。」
「すみません、寝坊しまして。」
楽屋のドアを開けると、勿論中には井上達。
既に着替え終わってて、調弦とかしてる。
「のしんも早く着替えてね。あ、来栖さんはどうしようか。」
「 ―― ……私、着替えなんて持ってきてませんよ。」
来栖の言葉に、全員が目を見開く。
「嘘だろ!?」
「そもそも、そんな話聞いてないわよ。」
「あー、そう言えば、何も言ってなかったっけ……!?」
流石の井上も、マジで驚いてるっぽい。
そうか、そういや何も言って無いような気がする。
「この格好じゃ駄目なの?」
「だ、駄目って事はねぇけど……あー、微妙だな、どうするよ井上。」
「うーん……そうだな。せめてミニスカ穿くとか。」
「お断りします。」
気持ち良い位の即答。うーん、でもそうだな。
ヴァイオリンだろ?ミニスカは却下なわけだし、かと言ってズボンはちょっと違う感じがする。
「俺らはこうだけどさ、こう、お嬢様っぽいスカートとかは?」
「何それ。」
「ミニスカは却下だろ?だからこう、ちょっと長めのスカート?」
「ああ……分かった、じゃぁちょっと席外す。30分以内に帰ってくるから。」
「え、おい!?」
ヴァイオリンは置いて、楽屋を出て行く来栖。
伸ばした手は、閉まったドアによって行き場をなくした。
「 ―― ……ど、どうする。」
「今は信じるしかないでしょ……大丈夫、出番まではまだあるし。30分以内なら大丈夫。」
確かに、30分以内に戻ってくるなら何とかなる。
来栖、ちゃんと間に合うように戻って来いよ……!
そして、本当に30分以内に来栖は戻ってきた。
「ただいま。」
「この馬鹿!心配させ、ん、な……。」
「これで良い?」
戻ってきた来栖は、確かにお嬢様っぽい格好をしてた。
セピア色で統一された服、ふんわりと広がるスカート。
1つに結んでた髪も下ろしてて、何か本当にそれっぽく見える。
「お……おお、良いんじゃねぇの。」
「そ?じゃぁ調弦済ませるから。出番まで後どのくらい?」
「後15分ぐらい、ってトコか。」
「余裕。」
服で雰囲気変わるもんなんだなぁ、と思った。 |
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