加賀 冬梧天笠 拓月城 静音南雲 颯姫

闇狩人

次は 加賀 冬梧


過去の日記
2008年09月(2)
2008年08月(35)
2008年07月(36)
全て表示


お気に入り
狩人の郷(掲示板)


nikkijamおすすめ
占いカフェ
懸賞ざくざく
人気ランキング


メニュー
プロフィール
ホームページ
メール送信
携帯へURL送信





管理者用
パスワード



count


交換日記 nikkijam

2008/09/05(金) 南雲 颯姫
タイトル いつか、あなたに 今日の気分終わります



「ねぇ拓くん」
「んー?」
「あたしね、いつか君に伝えたい事があるんだ」
「今じゃダメなの?」
「…うん。今はちょっとダメ。
 でも…でもね。もしあたしの気持ちが決まって…」
「うん」
「伝えようと思った、その時は…」
「うん」
「聞いて、くれる?」

「うん。いいよ」
拓くんは満面の笑顔をあたしに見せてくれた。


「待ってるから、オレ。…ずっと」


そして数秒後。
彼は耳元で、そう囁いてくれた。



もし今、君に告白すれば。
振られるか両想いかはわかんないけど、どっちかに結論が出てしまう。

それも良いかなってのも、ちょっと思ったんだけど…

君は、あたしの初恋な訳で。
しかも、今まで眷族やら飛鳥様やらとの戦いが目白押しだったり、冬梧くんが長になるからだとか、色々あって。
正直、恋を楽しめてない気がするんだ。

もっと、君を知りたい。君の事を、知りたい。
あたしを見て欲しい。あたしの事を、見て欲しい。

あたし、この気持ちを大切にしたい。もっと君に恋をしたい。
君を想う喜びを、もっともっと…噛み締めたいの。


告白は、それからでもいいと思ってる。
君を知って、あたしを知ってもらって、たくさん恋をしてから………それから。


「うん、待っていて。もう少しだけ…待っていてね」


彼に負けないくらいの笑顔を返し、その手をそっと握る。
笑い合うあたし達の頭上で薄桃の花びらが、優しい風に舞っていた。




2008/09/05(金) 南雲 颯姫
タイトル 心を決める瞬間 今日の気分続きます


「え? あー…えっと…あ、ありがとう?」
驚いたのか、声が疑問系。
困惑の表情を浮かべつつ、包みは受け取ってくれたけど。
…ちょ、あたし達(つかあたし)ムード無いよね。
な、何かさぁ、こう…改めると照れるっていうか…!!


「それね、前に借りていたハンカチを買い換えたのと、タイピン。ハンカチは汚れが取れなかったから、買って返す事にしたの。
 タイピンは、これからスーツを着る事も増えると思うので…使ってください」
「ハンカチなんか、いいのに…わざわざごめんね。でも、ありがとう。タイピンも、遠慮なく使わせてもらうよ」
「うん。あー…ちょっと待って!」
「?」
事もあろうに、拓くんはいきなり包みを開けようとした。
ちょ、その行動も嬉しい事は嬉しいんだけど…何か恥ずかしいんですけど。
だって、あたしセンス無いし…選ぶの何時間も掛かったし。
そんな訳で、拓くんの手を止める。彼はそんなあたしを、きょとんと見つめる。

「は…恥ずかしい、から。家に帰ってから…見てよ」
あたしの顔、きっと真っ赤っかだ。しかも耳まで。…間違いない。
だって、熱いんだもん。顔も耳も…何もかも。

「そう? じゃあ…家で一人、こっそり空けるね」
「よろしくお願いします」
よし、羞恥プレイは免れた…!


「なんかさぁ、あっという間だったね。この半年」
そのまま近くの桜の木を見上げるような形で、突然拓くんが呟いた。
「オレが居て、冬梧が居て、静音さんが居て、颯姫ちゃんが居る…そんな時間も、もう終わりかぁ」
「うん。そうだね…」
冬梧くんが長になれば、四人出会う事はもう殆ど無いだろう。しようとしても、難しい。
その旨を口にすれば、拓くんが少し寂しそうに笑った。
「湿っぽくなるのは嫌だから、今日はぱーっと楽しもうね」
「うん」
振り返った拓くんは、いつもの顔に戻っていた。


それからはお互いに何も言わず、ただ黙々と桜並木を歩いていた。
人の姿は、あたし達以外に見えない。
「…」
急に心臓がドキドキしてきた。理由はわかってる。
こんな、いかにもな状況。普通は利用しない手は無い。

けど…だけど、さ。

あたし…まだ…
もう少し…




2008/09/05(金) 南雲 颯姫
タイトル 彼への卒業祝い+α 今日の気分続きます


「拓くん、ありがとうね」
昇降口を出た所で、あたしは彼を振り返った。
「どういたしまして」
へらっと笑う拓くん。その視線が、冬梧くん達の居る教室の窓へと向く。
「今日、最後だからさ。…二人には悔いの無いようにしてもらいたいしね」
「…そうだね」
頷き、同じ所に視線をやるあたし。

冬梧くんと静音さんを二人きりにしたい。そんなあたしの意図を、一瞬にして汲み取ってくれた拓くん。
彼の勘が良かった事に感謝しながら、行こう、とあたしは彼を促した。

勿論さっきのは、それだけじゃなかったんだけどね。
…少しでも拓くんと二人で、一緒に居たかったんだよ。察してくれてたらいいけど…どうかな。


「それにしても、ここの桜…ホント綺麗だね」
御影高校と町を結ぶ、緩い坂道。こちら側から見ると下り坂になっているそこは、とても美しい桜並木となっている。
来る途中も静音さんと一緒に、数々の桜に見惚れたものだが…改めて見ても、また綺麗だ。

「ここは結構な名所なんだよ。この道沿いで花見する奴居るくらいね」
「へぇ、そうなんだぁ」
「あと一日二日くらいしたら、100パー満開になるから。そうしたら、そういう人出てくるよ」
「この道沿いでお酒呑んだりするんだよね? うわぁ、興味あるなぁ」
「変な酔っ払いおっさんとかいて、絡まれた生徒も結構居たって話聞いたよ」
「ふーん。それだと、女子生徒さんは危険だね」

この道を三年間、冬梧くんも…拓くんも。歩いてきたんだね。
ゆっくりゆっくりと、一歩一歩を踏み締めながら歩く。拓くんはあたしに歩調を合わせて歩いてくれる。
「あ、颯姫ちゃん。髪に花びらついてるよ」
拓くんの手が、あたしの髪に伸びる。
「…え? あ、あぁ。ありがとう」
優しい笑みに、ドキドキしちゃうよ。

いつもの拓くん。フェミニストな彼のいつもの動き。

わかってるんだけど…でもやっぱりちょっと勘繰っちゃう。

その行動は、天然なのかい?
それとも…あたしの気持ちを知ってて、確信犯なのかい?

聞いてみたい気もするけれど、聞かない方がいい気もする。


「…ねぇ、拓くん」
足を止める。
「ん? 何?」
数歩先で彼の足も止まる。
「あの、これ…さ。卒業祝い!そして、これからも頑張って祝い!」
振り返ったその眼前に一つの包みを突きつけた。



2008/09/03(水) 加賀 冬梧
タイトル 二人きりになって 今日の気分


「ん、了解。いいよ颯姫ちゃん」
「ほんと?! やったぁ!」
顔をほころばせて、ぴょこんと飛び跳ねる颯姫。

「じゃあ…そうだね。時間はもう15時過ぎてるし…
 オレ達の話もどのくらいかかるかわかんないから、18時になったらMaria前で待ち合わせにしようか?」
「ん? あぁ。それは構わないが」
「え、ちょ…拓さん?!」
腰を上げて言う拓に、答える。何故か静音さんが、慌てたような声を出した。
話がわかる奴で助かるよ、と彼は笑み、颯姫と顔を見合わせる。
む。何故か邪な空気を感じる…気がする。

「じゃあ、あたし達行くから。二人とも、遅れないでね〜」
「後で会おうね。そーんじゃ」
二人は、まるで作ったかのような満面の笑みを浮かべ、さっさと教室を出て行った。

残されたのは、俺と静音さんの二人だけ。

「…」
「…」

嵐が去ったかのように、急に静まり返る室内。
何かこう…改めて二人きりになると、やはり少しは緊張するな。
ちらりと静音さんを盗み見れば、落ち着かないのか、そわそわしながら俯いていた。

静音さんと、こうしていられるのも…今日が最後だ。
だが、俺は…今日を最後になど、したくない。
静音さんとの時間を、今日で終わりになど…したくはない。

俺は、静音さんの事が好きだ。一人の女性として、彼女の事を。
ずっと…彼女にこの気持ちを、伝えたいと思っていた。
だが、今までは…怖くて。伝えてしまったら、この関係が崩れてしまうのではないかと恐れて、伝えられないでいた。

しかし。俺は明日、郷へ帰る。
そうすれば、もう…そう簡単には、外界には出られなくなってしまう。

だから。今日。
この気持ちを、彼女に伝えようと。伝えなければならないと、そう心に決めていた。
今日を逃しては、もう一生、伝えられないと思っているから。

そして、願わくば………
いや、これは後でもいいだろう。


俺は椅子から腰を上げて、静音さん、と声を掛けた。
視線を上げた彼女へと、ふっと微笑む。

「このままずっとここに居るという訳にも行きませんから。俺達も、外に出ませんか?
 桜でも見ながら、時間を潰しましょう」
「え? えぇ…そうね。そうしましょうか」

静音さんもつられたように微笑んで、俺達は揃って教室から出た。



2008/09/03(水) 加賀 冬梧
タイトル 彼は生涯の友 今日の気分続(あとひとつ〜)


狩人としての使命も、何もかも。そんなものは何一つ、その背に背負われてはいなかったのに。
それに、親友、と。俺の事を…友、とも、言ってくれて。
何だか、不思議な気持ちだった。嬉しいというか、こそばゆいと言うか…


「色々あったけど、オレ…キミと出会えてよかった。勿論静音さんにも、颯姫ちゃんにもね」
拓はニッと笑って、こちらに手を差し出してきた。
「キミは郷の長。オレは専門学校と、進む道は別々となってしまうけど…でも、絆は変わらないから。
 オレとキミは、ずっと親友だからね?」
「拓…」
差し出された手を、強く握り返す。

「勿論だ。俺とお前は…これから先もずっと、親友だ」
「あぁ。これからもよろしく頼むよ? 親友」
「こちらこそ」

拓の手は温かい。その力強さも心地良い。
彼とならば間違いなく、会えなくても親友で居られるだろう。

…もう一度。
ありがとう、拓。



「冬梧くん、拓くん、お待たせ〜」
「待たせてしまってごめんなさい。懐かしい人達と会ったものだから…」
暫くして、颯姫と静音さんがやって来た。

「来たな、二人とも」
「あ、二人ともいらっしゃ〜い。って、懐かしい人って誰?」
拓が目敏く聞き返す。俺も少し気になっていたんだ。
すると二人は、ふふふと意味深な笑みを浮かべた。

「誰って…烏丸さんと、月居さんよ」
「二人とも、式に来てくれてたんだよ。もう帰っちゃったけどね」
「そうなの!? 京と綺羅ちゃんがー?!」
「来てくれていたのか」
うん、と頷く颯姫と静音さん。

そうか、二人とも…
郷に戻ったら、改めて礼を言う事にしよう。
来てくれれば良かったのに、と、拓は少しの間、ぶーたれていた。


それからは、他愛も無い話で盛り上がって。教室内は常に、四人の笑い声が絶える事が無く。
四人での穏やかな時間が流れて行った。
そんな中でふと、自然と話が止まり。それを見計らったかのように、颯姫が腰を上げた。

「どうした、颯姫?」
「うん、あのね」
俺に向いている颯姫の視線が、一瞬静音さんに向けられて。そのまま、拓へと動く。

「あたし、ちょっとさ。拓くんに話があって。…いいかな?」
「え? オレ?…」
拓が颯姫を見て、そして俺、静音さんへと視線を動かし…一瞬、ニヤッと笑った。



2008/09/03(水) 加賀 冬梧
タイトル 親友と呼ばれて 今日の気分


「っと、この教室は今日の所は片付けないらしいので、自由に使ってくれて構いませんよ」
「あぁ、ありがとう」
「いえいえ。…では、今日は楽しんでくださいね」
先程の真剣な表情は何処へやら。
いつも通りの飄々とした態度に戻った市川は、さっさと教室を出て行った。

それと入れ替わるようにドアが開き、拓がひょっこりと顔を出した。
「よーす、冬梧。ってアレ? まだオレだけ?」
そうだ、と頷けば、彼は後ろ手にドアを閉めて、こちらへやって来る。

「って、颯姫ちゃんと静音さんには連絡したのかよ?」
「………はっ。そういえばっ」
「してないのかよっ!!」
二人に連絡するの、完っ全に忘れてた。
仕方ないなぁ…と呆れた声で呟きながら、拓は携帯を取り出して、二人にメールを送ってくれた。


「ったく。クラスの連中…なかなか放してくれなくてさぁ」
「拓は人気があるからな」
「ちょ、そんなホントの事言うなって冬梧〜。照れるじゃん」
「…」
「うっわ、何その沈黙」
本当に、相変わらずだな。まぁそれも拓らしさか。

「お前はずっと…人の中に居た。いつだって笑顔で、人を惹き付けて。お前の周りは、いつだって笑顔で溢れていた気がする」

「…なーに見てきたような事言ってんだか」
少し照れたのか、鼻の頭を掻きながら目を逸らす拓。
「そりゃあ見てたさ。お前の事は、ずっと見ていた。…あの日から、ずっと」
“あの日から”に拓も、俺の言葉の意味がわかったようだ。真剣な視線が、こちらに戻ってくる。

「拓。本当にありがとう」
「なっ…何さ、急に」
「ずっと、一緒に居てくれて。共に戦ってくれて。…ありがとう」

巻き込んでしまったのは、こちらなのに。
狩人方の都合で振り回され、巻き込まれ、望まない中でその体は眷族の…伶人の血が適合し。狩人と同じ体となってしまったのに。
それに、妹までもが巻き込まれてしまったのに。

お前は俺達を責めはしなかった。共に、最後まで…戦ってくれた。

「そんなのいーじゃんか。オレら、ダチだろ?
 つかダチが…親友が戦ってる。自分だって同じ力を得た。自分だって一緒に、この御影を守りたかった」
「…拓」

親友が戦ってるから。共にこの町を守りたいから。
たったそれだけの…言い方は悪いが、そんな些細な理由で。拓は命を懸けてくれた。
彼は普通の人間だったのに。



2008/09/03(水) 加賀 冬梧
タイトル これからも、共に 今日の気分


考えてみれば、市川は…教師をやって10年。俺がこっちに来た時に、御影高校に教師として入ったんだったっけな。

「君達の傍には、いつだって…大切な人達が居る事を、忘れないで。大切な人達は、必ず…君達のすぐ傍に居ますから。
 そして、その人達への感謝を忘れずに」

市川は、生徒達をぐるっと見渡して。一瞬、俺で視線を止めて。
それから…彼には珍しい満面の笑みを、その顔いっぱいに浮かべた。

「卒業、おめでとう」



その後は生徒の親達も教室に呼ばれ、市川は彼らにも祝いの言葉を述べて。
他クラスが終わりだしたのか、廊下も騒がしくなってきた頃。穏やかな雰囲気の中、解散となった。
教室を出て行くクラスメイト達と、その親達。
彼らの背を見送り、最後には俺と市川の二人だけが、教室に残された。

「終わっちゃいましたね」
窓枠に背を預け、外の様子を見下ろしながら、市川が呟いた。
その言葉には、この卒業の意味だけではなく…今までの色々なものが、含まれているのだろう。
「そうだな」
軽く頷いてから、俺も窓の傍へ寄った。
校庭に並ぶ桜の木々。その花々の隙間から、生徒の姿がちらほらと見えた。

「坊ちゃん。あなたは…逞しくなられた。心も、体も」
預けていた背を離して。ぴっと伸ばして、真っ直ぐに俺を見ている市川。
その瞳があまりにも穏やかで優しくて、何となく居心地が悪くなる。

「何だよ、いきなり…?」
「あんなに小さくて、頼りなかったあなたでしたが…大きくなられた。もう、郷を背負って立っても大丈夫なくらいに」
「市川…」
「嬉しいですが、同時に少し寂しい気もしますよ。我が子が成長し、離れて行ってしまうような」
「…何を言ってるんだ」
珍しいな、市川がこんな言い方をするなんて。
クッと苦笑を漏らせば、彼も同じようにして笑った。

そして次の瞬間、

「俺はいつだって、あなたの傍にいます。あなたの片腕として、生涯、お仕えする事を誓います」

地に片膝をつき、恭しく頭を下げた。

「…」
本当にこいつは…
全く、生真面目な奴だよ。本当に。

「お前の気持ちはわかっている。…生涯俺に仕え、郷の為に尽力してくれ。頼んだぞ」
「…はい。お任せを」
一度顔を上げ、頷く俺を確認してから、彼はもう一度頭を下げた。


「さて。それじゃあまだ仕事があるので、これで」



2008/09/03(水) 加賀 冬梧
タイトル 彼はやはり担任だった 今日の気分


そうツッコもうかとも思ったんだが、彼がそう思うのは、間違いなく俺の所為だから。
それにはわざと気付かない振りで、頷く。

「そういえば、mariaの予約はもう取れてるからな。今日の夜18時だけど、いい?」
「18時な、わかった」
「で、一応特別にコース料理を作ってもらう事になったんで。四人でぱーっと楽しもうぜ!」

ん? コース料理?
ちょっと待て、そうすると…?

「…拓。そのコース料理には、特大ジャンボパフェは含まれているのか?」
「………へ?」
拓が目をまん丸に見開き、固まったように俺を凝視する事30秒。
聞き返されて、同じ事をもう一度言った。するとさらに、拓を取り巻く空気が固まった。…ような気がする。
「どうなんだ? 今日は、3個は食う気でいたんだが…」
「3個ってお前…食いすぎだっつーの! 化け物かこの甘党王がぁぁっ!
 つか、それはコースに含まれて無いから! 別注文だから!」
「そうなのか」
それは残念だ。仕方が無い…別注文で頼むとしようか。
「やめとけよー。腹壊すぞ〜…」
俺の心の中を読んだかのような発言。

…いいじゃないか。好物なんだから。


「じゃ、式終わったら行くから」
「あぁ、わかった。待っている」
廊下で別れ、それぞれ教室へと入る。
“卒業おめでとう”と派手に彩られた黒板を見つつ、クラスメイトと挨拶を交わして。他愛も無い話に花を咲かせていると、市川がやって来て。

そして、卒業式が始まった。



式典は滞りなく進み、写真撮影だの何だのと、全てが終了し。
教室に戻ってきて、市川の、担任としての祝いの言葉を聞いて。思った事が一つ。
市川は狩人として、俺や律子さんの命で動きながらも、きちんとクラスの事は見ていたようだ。
その言葉一つ一つに、生徒達を慈しんでいるのが滲み出ている。
それを感じるのだろうクラスメイト達の殆ども、涙を浮かべたり、袖で目元を拭ったりしていた。

「君達は若い。これからの人生、色々と大変な事も多いと思う。
 だが…君達は、一人じゃない。ご両親や親戚、友達、近所に住む人…たくさんの人々に囲まれて。
 時に助け、助けられて生きている事を、忘れてはいけない」

市川も、今期でこの御影高校の教師を辞める。理由は、一身上の都合、との事。
しかし本当の理由は、俺の片腕として動いてくれるから…というものだ。



2008/09/03(水) 加賀 冬梧
タイトル 桜の坂道を 今日の気分


幼い俺を時に厳しく、時に優しく、見守ってくれた家族。もう何と言って感謝すれば良いか、わからない。
もう皆、俺が長老となる事は知っている。だからこそ、今日…この卒業式を新たな門出とし、皆で来てくれるというのだ。

「それじゃあ、久美子も行ったし俺も行きます。行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
「お兄ちゃん! 気をつけてね〜」
三人に見送られ、俺はマンションを後にした。



学校へ続く緩い坂道。その道路沿いは見事な桜並木となっていて、この御影町では、隠れた桜の名所となっているらしい。
俺も三年前、初めてこの道を通った時は、その桜の素晴らしさに圧倒されたが…
今日もこの道々の桜は、三年前と同じ美しさでそこにあった。
時折吹く優しい風が桃色の花びらを散らし、舞い上げて。学校へと向かって歩く俺達の頭上に、そっと降り落ちて来る。

この道を歩くのも今日が最後か。本当に、俺の学生生活は…これで終わってしまうんだな。
そして、この外界とも…
そう考えると、何となく寂しい気がするな。何だかんだと、10年はこちらに居たのだから…

この道の桜を、ずっと憶えておこう。その一つ一つの美しさを、ずっと。
俺はいつもよりも大分歩調を落として、ゆっくりと歩いた。


そして。
校門が近づいてきた、その時だった。
「とーうーごっ!」
いきなり声をかけられて、肩に何かが触れた。
振り返らなくてもわかる、知った気配。そして明るい声に、自然と口元がほころぶ。

「拓。おはよう」
「おっす冬梧〜。卒業おめでとう!」
「あぁ、お前もな。おめでとう」
そこで初めて振り返れば、拓は人懐っこい笑顔を浮かべていた。

揃って校門を潜り、生徒玄関へ。
互いにクラスメイト達と挨拶を交わしながら、一緒に階段を上がる。
「何か…あっという間に来ちゃったな、今日がさ」
「そうだな。だが、今までの時間…とても楽しかった」
「そりゃあ勿論、オレだってそうだけどさ。でも………」
拓の視線が落ちる。

「ああああ、辛気臭ェ! つか何オレ、何で一人でこんなになってんのちょっとー!」
ガシガシガシと髪を掻き、顔を上げた拓は、俺と目が合うとちょっと照れたように笑った。

「今のナシナシ! 今日は折角のめでたい日なんだから!! な?!」
「…そうだな」
…お前一人が辛気臭くなっているんだろう。



2008/09/03(水) 加賀 冬梧
タイトル 卒業式の朝 今日の気分続(長いっす)


出て行く颯姫を見送って、俺も部屋を出た。
マンションの入り口を出る際、目の前を見知った後ろ姿が通り過ぎて行こうとしたので、呼び止める。
三園家の長女・久美子だ。

「あ、冬梧様。おはようございます」
「おはよう。…って、ここで冬梧“様”というのはな…」
人の通りは無いとしても、誰に聞かれるかもわからないし。何というか、様、って…気恥ずかしいんだけど。
「すみません。…加賀先輩」
困惑した表情で、しゅんと視線を落とす久美子。
彼女は真面目だからな。自分の主を先輩と呼ぶ事に抵抗があるんだろう。

「あ、冬梧お兄ちゃん! おっはよー!」
続いて今度は、背後から声を掛けられた。
振り返れば、そこには元気いっぱいの笑顔で手を振り駆けて来る、三園家の次女・真由子の姿が。
「真由子。おはよう」
「うん、おはよ! 卒業おめでとう!」
人懐っこい笑顔で抱きついて来たその髪を、優しく梳いてやる。
この子は姉と違い明るく奔放で、俺の事は主とは呼ばないので有難い。それに、兄のように慕ってくれているのも嬉しい。
「卒業式、真由も行くからね! お父さんとお母さんと一緒に!」
「そうか。待ってるからな」
「うん!」

「それじゃあ冬梧さ…いえ、加賀先輩。私は卒業式の準備がありますので、これで」
会釈をして、久美子が踵を返す。
「あぁ。気をつけて」
「はい。ありがとうございます」
その足が一歩、また一歩と前へ進む。
俺と真由子はその背を見送っていたのだが、途中でそれが止まり、彼女は振り返った。
そして俺を見て、また、頭を下げた。
「卒業…おめでとうございます」
頬を紅潮させ、久美子は走り去って行ってしまった。

「冬梧さ…冬梧君。おはよう」
「おはよう。いい朝ですね」
久美子が去ったと同時に、今度は店の方から出てきた二つの人影。このマンションの管理人兼ケーキ屋のオーナーである、三園夫妻だ。
おはようございます、とこちらも挨拶をする。
「卒業おめでとう。今日は店を休んで行くからね」
「申し訳ないな…でも、嬉しいです。よろしくお願いします」
「そんなかしこまらないで。当然の事じゃない。冬梧君は主であり、息子でもあるんだから」
「恐縮です」
互いに顔を見合わせて、笑い合う。

圭一と彩、久美子、真由子。彼らには、外界に出て来た時からずっと、世話になりっぱなしだった。



交換日記は無料で借りられます