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「「「○○○。」」」
表現できない音で雪だるまが鳴いて、3人は一人づつ大根よろしく引っこ抜かれて雪上に出た。
「う〜寒い…〜」
ジャンが体中に着いた雪を落としながら顔を上げると、いつの間にか雪だるまの上に乗った少年と目が合った。
「じゃぁね!楽しみにしてるね〜!」
にっこり笑った少年は、あっという間に雪だるま達と消えていった。
「な…なんだったんだ?」
「楽しみにしてるって、何を楽しみにしてるって言うのかしら」
『…何をしている』
「うわぉ!」
いつの間にか、真後ろに来ていたアッシュールに驚いて、ジャンは飛び上がった。
「何って…ねぇ。」
「つか、アッシュ一っ飛び目的地まで運んでくれよ」
『ない』
「ない?」
『先ほどまでは、その存在を強く感じた。だが、今は気配すら感じられない』
忌々しいといわんばかりにアッシュールが山頂を眺める。
「ってことは、さっきの坊主、明らかに妖しいよな」
「捕まえて、聞いてみるのが手っ取り早いという事か」 |
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「雪だるま……?」
「誰がこんなところに…」
丸いボディからニョッキと生える棒の先には手袋が被さっていて、ヒラヒラと揺れている。顔も着いている事はついている。
全体的に表情に乏しいのは、まゆげと口は長方形の左右の目は丸の黒い紙で出来てるからだろう。
赤いバケツ乗っかる頭部の可愛らしさが、怖いといえば怖い。
しかも、こちらが気付いたと感知した途端、真っ直ぐ向かってきている。
これがホラー映画なら、最初に殺されるモブ3人だ。
「気にするな、幻だ。ココは高地だからちょっと脳が酸欠なんだよ。こんなトコに雪だるまがいるもんか。」
と、ジャンは現実逃避を試みた。
「じゃぁ、あれは本物か!お前が理論的に話す事自体が幻聴だ」
「どんな基準だよ!」
ジャンの現実逃避があっさりヴィントに覆されたところで、雪だるまは3人の目の前に立ちはだかった。
「うわ…かわいくない。」
クリスティーナが呟く。
それもそのはず、今目の前に立ちはだかったのは、3mもありそうな巨体。
見上げれば見上げるほどでかく、押しつぶされてしまえばココで終わりになりそうだった。
「こんなの聞いてねぇぞ」
ジャンが呟いたその時だった…
雪だるまがギシ…と音を立てググっと迫り始めた。
「た…倒れてくるわ!」
3人が一目散に逃げ出す。やっと登って来た雪道だったが、この際命を落とすよりはマシだ。
ズズ〜ン
大きな雪だるまは倒れて、3人はその風圧で背中を押されて転がる。
「「「ぶはぁ!」」」
雪に埋まった三人が顔を出した時に見た光景は、雪だるまだらけであった。
先ほどの雪だるまよりずっと小さく1mくらいだろう。だが、数が見えるところだけでも30体以上。それらが彼らの周りを取り囲んでいるのだ。
白い雪に、唐突に影が伸びた。
影を辿れば、そこにいたのは真っ白いモフモフのフードを被った4歳か5歳くらいの子供だった。白いコート、白い手袋白いブーツ。肌も白いし、髪も銀に光っていた。
「こんにちは」
屈託のない笑顔の少年に、底知れぬ恐怖を覚える3人であった。 |
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2008/10/21(火)
ヴィンセント・カッツェ
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それから、ジャンとクリスティーナが起きてきたのは日が昇ってからで、その頃には、すぐにでも出発したそうだったアッシュールは苛立ちを見せていた。
『早くしろ……』
「焦らなくても山は逃げないって」
相変わらずのマイペースで用意を急ごうとしないジャンは、急かせるアッシュールにへらっとそんなことを言っている。
陽が出てもそれほど気温は上がらず、それどころか、歩いているうちに雪がちらつき始めた。
「登り切るまでに凍えちゃいそうだわ」
クリスティーナが分厚く着込んだ服の襟元をぎゅっと握った。
山道を進むにつれて、道端にぽつぽつと融け残りの雪が目立ち始め、気付いたときには辺りの景色は真っ白だった。
降る雪で、視界も白い。
うっかりすると遭難してしまいそうだ。
皆の口数は少なくなって、「う〜、寒い」とかそんな呟きばかりが漏れる。
それぞれ姿を見失わないようにしながら、とにかく先へと歩いていると、何かが視界の端をさあっと過った気がした。
「……?」
ヴィンセントは振り返ってみたが、何もいない。
気のせいだったかと首を傾げつつ、前を向くと少し先に赤いものが見えた。
「雪だるま……?」
「誰がこんなところに…」
目の前に、雪だるまがあった。
赤く見えたのは、お約束のように被せられたバケツの色だ。
丁寧に(?)手の位置には棒切れが差してあり、手袋まで嵌めていた。 |
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2008/10/21(火)
ヴィンセント・カッツェ
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翌朝、目を覚ましたヴィンセントは、テントの外に出て肌を刺すような寒さに身体を震わせた。
踏み出した足元で、しゃく、と音がした。霜が降りているようだ。
空はようやく白み始めたばかりで、陽は出ていない。
ゆるりと辺りに視線を巡らせて、薄暗闇に浮かぶ黒い影に、一瞬ぎょっとする。
「なんだ、アッシュか」
すぐにアッシュールの姿だとわかって、ヴィンセントは身構えた自分に苦笑しながら、「おはよう」と言った。
アッシュールからの答えはなく、ヴィンセントの方に顔を動かしたが、すぐにそれまで向けていた方向に戻した。
ヴィンセントはアッシュールの隣りに立つと、彼の視線を辿った。
それは山の頂上辺りの方角だったが、見上げても霧が出ているため、先の方ははっきりと見えない。
「まだ長そうだな」
特に話しかけるつもりでもなくヴィンセントが呟くと、アッシュールが言った。
『もうすぐだ……』
「見てきたのか?」
ヴィンセントが目を丸くして隣りを見たが、アッシュールは顔を動かさないまま続けた。
『見ていなくても感じる……扉が…』
「まだ見ぬ世界に繋がる鍵……だったか」
ヴィンセントはふと、絵本で読んだワイルド・チェリーのおとぎ話を思い出す。
願いが叶うというのは本当なのだろうか。
信じきれないまま、けれど期待してここまで来た。
この先に答えが待っているのだろうか。
ヴィンセントは再びアッシュールと同じ方向に視線を向けた。 |
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アッシュールが飛び去った後、しばらくして聞き覚えのある叫び声が聞こえた。とりあえず、一口で喰われたわけじゃなさそうだ。
ジャンはクスリと笑った。
まぁ、後は頑張れ。
再び歩き始める。背の高い木が少なくなってきた。
「おぉ、あの荷物はまさしく!」
先ほどの休憩から程なくして、アッシュールが置いていったと思われる荷物を発見した。
3人は、やっとの事でそこまでたどり着くと、再び腰をおろす。
随分登って来た気がするが、見上げても雲が邪魔をしててっぺんは見れない。
2度目の休憩して、すぐ気がついたのは空気が随分冷えてきている事だった。これだけ登れば当然だろう。もうすぐ雪が見えるかもしれない。
アッシュールが置いてくれた荷物を解いて、中から上着を出す。一着づつクリスティーナとヴィンセントに放って自分もさっさと袖を通した。
「今日はココで野営だな」
「まったく気の利いた所に置いてやがるぜ」
傍らを見れば清水が湧き出ている。ジャンは感心しながら、その沸いている水を掬って飲んだ。キンと冷えた水に身体も癒されるようだ。
それから適当な場所にテントを張り出す。今までの旅ですっかり慣れたテント張り。クリスティーナはすっかり疲れてしまっているようで、荷物に持たれてグッタリとしている。
ジャンもヴィンセントも疲れているのだろう、余計な事も言わずにもくもくと作業を進めていた。
そうしているうちに日は暮れ始め、火を起こして干し肉を炙るころにはすっかり暗くなっていたのだった。 |
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2008/09/15(月)
アッシュール・ウィンゲルア
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その声を聞き一番震えたのは多分あのジャン・ポレッチェの弟であっただろう。
なぜなら、アッシュール・ウィンゲルアは最終的には、獲物を狙う猛禽類のように、
ジュリアーノの上を旋回していたからである。
ジュリアーノは、真っ青い顔をして
その上空の魔物を見上げて動くことができないでいるようであった。
たぶん、ジュリアーノは小さいころ村の年寄りに聞いた話を思い出しているのだろう。
山の崇り・・・
山から黒い魔物・・
近隣の村を襲い多くの犠牲を出したというその魔物の襲撃。
その姿は闇のように黒く、長い角、鋭い鉤爪、
馬とは違う大きな口にある鋭い牙。
黒光りする鱗・・・そして蝙蝠のような翼・・・
今・・ジュリアーノの上空を旋回しているのはまさにその魔物であった。
それは実在してそこにいて、まさにジュリアーノを獲って喰おうと、
上空を旋回しているのだ。
何もできず動けずにいるのもわかる。
アッシュール・ウィンゲルアは高度を徐々に下げて、
わざと、ジュリアーノの頭を掠め飛んだ。
「わぁぁぁ!!!!」
大きく悲鳴を上げて、頭を抱えて蹲ったジュリアーノを、前脚で蹴り転がす。
「ぎゃぁぁぁ〜〜〜〜」
ゴロゴロゴロと山の斜面を少し転がり落ち、樹の切り株に当って止まった。
しかしそのまま動かなくなってしまった。
アッシュール・ウィンゲルアはどうしたのかと、上空からじっと見ていると、
まるでカメのように、少しするともそもそと動き出した。
これは面白い・・・
あの上の3人が野営地に辿り着くまで、これで遊んでいようか・・・
アッシュール・ウィンゲルアはその亀めがけて急降下するのであった。 |
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2008/09/15(月)
アッシュール・ウィンゲルア
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別に、この山を登るのは、へんなゲームに参加しているからではない。
この山の頂上にあるという、扉を開くためである。
そのために、鍵を探し求め、ここまで来たのだから・・・
それを成し遂げるのに、邪魔なものは排除する・・・
それが、当然である。
今、邪魔なのは、後からこのへんなゲームのためだけに、
この山を、登ってくる者、ジャン・ポレッチェの弟である。
排除・・一番簡単なのは喰うことだ。
自分の腹ごしらえにもなる。
しかし・・・・
アッシュール・ウィンゲルアは山を駆け下りながら、
首にかけているマオちゃんをチラ見する。
白いトラの着ぐるみがとてもよく似合っている。
その着ぐるみにつけられた、羽がまるで天使のようである。
これを作ってくれたのが、ジャン・ポレッチェの母親であり、
その邪魔者の母でもある。
それが、喰ったら悲しむというのだ・・
きっとマオちゃんも悲しむだろう・・・
そう・・マオちゃんも心の優しい子なのだから。
アッシュール・ウィンゲルアはそのまま地を蹴って、
その姿をブラックユニコーンへ変えると、背にある蝙蝠様の翼を大きく
広げて羽ばたいた。
あの老婆が言っていた。
村人たちは、あの時の記憶と言い伝えを思い出し、
恐怖するだろう・・
後から追いかけて、この山に登る者がいないように、自分の姿を誇示する。
気がつかないものも気がつくように、上空で大きく吠え声をあげる。 |
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諦めの悪い奴だからなぁ、とジャンがぼやく。
『あいつ、喰ってやろうか・・・』
「「「・・・」」」
冗談に聞こえない。
「・・・喰っても美味くないぞ、きっと」
「そ・・・そうね。多分美味しくないわ」
「でも鬱陶しいよな」
ヴィンセントやクリスティーナのフォローを覆す実兄の言葉。
「「お前アホか!!」」
「がふっ」
顔面に錫杖、腹部に蹴りを食らうジャン。
「うぅぅ・・・容赦ねぇなぁ」
「サイテーだな・・・」
「サイテーだわ・・・」
「マオちゃんはどう思うかなー?
可愛い白い虎さんのぬいぐるみを作ってもらって嬉しいよなー」
急に話の矛先を変えるジャン。
なる程、漆黒の馬の首元にはモコモコの白い虎を被った、黒猫のぬいぐるみ。人型の時は背負えるが、今は馬なので首からぶら下げている。
「あぁ・・・?」
「!か、可愛いわv凄くv誰に作ってもらったのかなぁ、マオちゃん!」
クリスティーナはジャンの意図したところが読めた。
微妙に声を裏返らせながら、視線をヴィンセントに向ける
「?」
ジャンはどうやらきぐるみを作ったのがリラであることには気付いていたらしい。その心を、知らずに読んだクリスティーナも合点するが、ヴィンセントには解らない。
『リラという女が作った。これでマオちゃんも寒くない・・・』
馬なので表情がまったく読めないが、可愛いと言われてまんざらでもないようだ。アッシュールの言葉でヴィンセントも、やっと意味を察することができた。
「そうなの、これはジュリアーノのママが作ってくれたの。
ふわふわで暖かくて、とってもお気に入りなの」
裏返ったヴィンセントのマオちゃん声。
「マオちゃんのお気に入りを作ってくれたママを悲しませるような事は、しないわよねー?」
すかさずクリスティーナが言う。
『・・・あれを喰うと悲しむのか?』
「悲しむどころじゃねーだろうな」
目を反らせてはいるものの、らしくない声色でジャンが呟いた。
「・・・ジュリーちゃん、早くママのところへ帰ればいいね」
マオちゃんの声でヴィンセントが言うと、アッシュールは空へと飛び上がって木々の向こうへと消えたのだった。
「喰ったりしねーよな・・・」
「多分な・・・」 |
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ジュリアーノは必死だった。
何故こんなにも必死かというのは、本人にも微妙な点であるらしい。
ただ、兄の側にいた女性は、確かに可愛らしいと思ったことは事実だった。しかし、何故、あの兄の側にいるのか・・・。しかも「お付き合いしている」らしい。
これは騙されているのではないか?
ジュリアーノはそう思った。
可愛いと思う心半分、騙されている彼女を助けなければならないと思う心半分。多分、言い訳も混じっている、微妙に複雑な男心。
荷物は重いし、山道は上り坂が続く。
ジュリアーノの足取りは段々と重くなっていった。荷物のないジャン達の一行は、小さくなっていき、曲がりくねる道に消えてしまった。
ジュリアーノは荒い息を吐きながら立ち止まって、太い木の根元に腰を下ろすのだった。
「・・・きっと挽回できる。装備もない山を舐めてる奴等に負けるものか・・・」
まだまだやる気満々のジュリアーノであった。
さて。
山道は続く。いくら荷物がないとは言え、淡々と続く上り坂は非常にきついものがあった。3・4時間もすると流石にへたばってくるらしい。
最初に音をあげたのは、クリスティーナだった。
「ちょっと・・・!いい加減に・・・休みなさいよ・・・」
笑うに笑えないほど、げっそりした顔で言うと、クリスティーナはへたり込んだ。
こいつら、絶対自分のことを女扱いしてない・・・と思う。
「あぁ、悪い」
振り返って立ち止まるヴィンセント。ジャンも流石に疲れたのだろう、大きく息を吐いて道端にどかりと腰を下ろしたのだった。
「あと、どれだけあるのよ・・・」
「まだまだ・・・半分くらいか?」
「うわぁ・・・」
空を見上げれば、雲ひとつない空。だが、こんな時は天気がいいのが恨めしくなるというものである。
ふと、頭上に影が落ちてきた。大きな羽音をたてて、アッシュールが下りてきた。
『こんなところで何をしている』
「休憩だよ、休憩!」
ジャンはすっかり大の字になって寝転がっていた。
「なぁ、あいつはまだ諦めてないのか?上から見えなかったか?」
ヴィンセントは修業の賜物か、それほど疲れた顔はしていない。
余裕があるのだろう。姿が見えなくなって久しい、ジュリアーノの事を気にかけているらしい。
『あいつ・・・』
「この馬鹿の弟だよ、ジュリアーノ」
『・・・あぁ、もっと下の方にいた』 |
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2008/08/14(木)
ヴィンセント・カッツェ
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なにやら楽しそうな村人たちの声援を背中に受けて、花嫁争奪レースの参加者たちは山頂へ向けて走り出した。
もちろん真面目に走るつもりなどなく、余計な説明をせずに山へ向かう口実だ。
計算外といえばジュリアーノの参加だが、適当な所で足止めをしてついて来られないようにでもすればいいと、不気味な柱の間を走り抜けながら、ジャンとヴィンセントは短く会話を交わした。
2人のすぐ後ろにはクリスティーナがいて、それよりもさらに後ろから、ジュリアーノが走ってきている。
元々肉体派でない上、大荷物を抱えているからその分遅れているのだ。
「なんかあいつ、必死だよな」
「案外本気で参加してるんじゃねーの?」
呆れた目を後方に向けて呟いたヴィンセントに、ジャンがくくっと笑って言う。
「ちょっと! 冗談でもやめてよね」
クリスティーナが抗議を挟んだ。
不憫なジュリアーノである。
最初は村人の目もあって飛ばしたため、ジャンたち3人とジュリアーノの間の差はどんどん開き、お互いの姿が見えなくなったところで、ペースを落として歩き始めた。
しばらく進むと、先の方に黒い人影が道端に腰を下ろしているのが見えた。
人型になったアッシュールだ。
「いつの間に……」
「ズルすんなよな〜」
「全て付き合う必要はない…」
馬鹿馬鹿しいとばかりに呟くアッシュールに、ヴィンセントが苦笑する。
「まあ、確かにそうだな」
そう言いながらも、アッシュールにしては付き合いがいいと思うのだ。
「どうせなら俺たちを頂上まで一気に連れて行ってくれればいいのに」
だがジャンの言葉には、冷たい視線が返される。
アッシュールは無言でまた馬の姿に変わると、
『さっさと来い…』
そう言って先に走って行ってしまった。
「ま、待て〜…」
そうしているうちに、いつの間にか追いついてきたジュリアーノが、息も切れ切れに上げる声が聞こえてきた。 |
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